内容説明
日本建国以前の列島の状況を知るには、当時の文献の活用が欠かせない。しかしそのことが、さまざまな誤解を生んできたのも事実だ。本書では、中国大陸の政治動向が列島に及ぼした影響をたどることによって「魏志倭人伝」「日本書紀」の成立事情を解明し、卑弥呼の出現、倭国王家の成立から日本建国までの倭人の実像を、世界史的視点で描き出す。
目次
第1章 日本古代史へのアプローチ
第2章 『魏志倭人伝』とは何か
第3章 『日本書紀』の構造
第4章 初代の倭国大王・仁徳天皇
第5章 大和朝廷は実在しなかった
第6章 『古事記』と『三国史記』の価値
第7章 中国はアジアをつくる
第8章 奴国から邪馬台国へ
第9章 謎の四世紀
第10章 日本の誕生
著者等紹介
岡田英弘[オカダヒデヒロ]
1931年東京都生まれ。東京大学文学部卒。57年『満文老档』の研究で日本学士院賞受賞。東京外国語大学名誉教授。その研究は中国史、モンゴル史、満洲史など広範にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
50
日本という国家の形成に中国が大きな影響を与えているという観点から歴史を語っている。『魏志倭人伝』も司馬懿を賞賛するために描かれた政治的な文書であるという見解は興味深く感じた。その一方で『日本書紀』が天武天皇や持統天皇の意向を受けて書き換えられたとする説には疑問を感じた。『日本書紀』は資料の書き換えを行う歴史書ではあるが、天皇と実際に書き換え作業を行う人のやりとりは何度も必要になるはずで、時間的にも現実的とは考えられないからだ。その他、見解に断定的な言い方が多く、盲信するのは危険だと思う。2024/12/20
fseigojp
9
日本は中国だった2019/10/16
Hiroshi
4
日本古代史を世界史の観点から見ていく本。中国史・モンゴル史・満州史を専門とする著者が、今から40年前に書いたもの。13世紀から始まるマラッカ王国の国史「マレー年代記」を見ると、たった1世紀前のことですら、中国に残された記述と全然違う自己に都合よく書き換えていた。このように国史は書き換えられるものだということを前提に、中国の「魏志倭人伝」、日本の「日本書紀」「古事記」、朝鮮の「三国史記」という四大史書の成立の事情を検討し、資料としてどの程度まで使えるかを理解して、東アジアにおける倭国・日本の誕生を読み解く。2017/01/27
undine
3
日本史に疎いと言う自覚はあるが、岡田氏が書かれた本なので読んでみた。50年前の最新の学説の一つとして受け止めた。日本書紀、古事記が書かれた当時の政治情勢を反映したものだと言う見方には説得力があった。大王、天皇の繋がりが複雑すぎて読むのに骨が折れた。50年経った現在も邪馬台国論争は続いており、この本で著者が主張する通りであれば、魏志倭人伝を元に邪馬台国の所在地を明らかにすることは今後も不可能だろう。初心者向けの歴史書を読んで理解を深めたくなる。2025/04/30
bapaksejahtera
2
現代的国民国家の常識からの歴史判断を諌め古代における書物と識字の意義に目を向けさせる。最後に土語たる倭語を日本語に昇華させた8世紀初頭の万葉集を論じ呉音漢音の成立を想起せしめる。やや臆断の気味はあるが中国資料や日本朝鮮の二次資料からの演繹は納得させられる。2019/10/02