著者等紹介
菊池寛[キクチカン]
1888‐1948。本名寛(ひろし)。高松の元藩儒の家の生まれ。極貧に育つ。大正5年、第四次「新思潮」に加わり「屋上の狂人」「父帰る」を発表。大学卒業後、時事新報社に入社。「忠直卿行状記」「恩讐の彼方に」で作家としての地位を確立。大阪毎日新聞社の客員となって長篇小説「真珠夫人」を連載、多くの読者を得た。大正12年「文藝春秋」を創刊、やがて“文壇の大御所”と呼ばれる実力者となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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寺
48
という訳で読了。青空文庫にあるものはそれぞれレビューしたが、その他について記す。『新今昔物語』より2篇『弁財天の使』と『好色成道』。『弁財天』は信心深い豪商が痛い目に会う話。普通に面白い。『好色』は、ある女とやりたい一心で勉学に励む修行僧が、学問が進む度に煩悩を失い、大僧正になってしまう話(笑)。これは好きだ。男のサクセスの基本だ。あと短い随筆集『話の屑籠』が僅か6ページ。もっと読みたかった。解説は井上ひさし『接続詞「ところが」による菊池寛小伝』。さすがに芸のある解説である。菊池寛贔屓になった。2015/11/18
めしいらず
26
先日読んだ新潮文庫編と被っていない作品を。家族を30年苦しめた祖父の抜けた筈の賭博癖。孫と勝負事で遊ぶ彼の姿に家族の恨みが溶けていくラストの美しさ「勝負事」。心中した娼妓の尊厳を冒涜する女将の所業と、検事の実に人間的な計らい「島原心中」。忠義と愛情の間で揺れる武士道精神の皮肉な末路「仇討禁止令」。子らに、村人に、かつての部下に命乞いを重ねる主人公の無様が嗜虐者たちの残虐性に火を点ける。圧倒的優位から相手を辱め、嘲り、嬲りながら少しずつ殺していく人間の修羅。反吐が出るほど胸糞悪い「三浦右衛門の最後」が白眉。2025/08/17
イプシロン
15
私情を交えず坦々と語っていく菊池節は、ともするとハードボイルドかと思ってしまう。が、そこにはきちんとしたテーマと菊池の心持ちがある。読んでいて号泣するとかいうより、読み終わった後、目の前に晒されたテーマを思索せざるを得ない強烈な印象が残る。特に三十代で書かれた「恩讐の彼方に」「忠直卿行状記」にはそれがあった。仇討ちという感覚は現代の日本人には希薄ゆえか、凄い世界だな……これはと嘆息した。愛なのか憎悪なのか、これは微妙で繊細なものがあると感じた。井原西鶴を耽読し、学生時代に二万冊を読んだ知識の痕跡が明らか。2014/10/13
カラスノエンドウ
12
安野光雅装幀の文庫本で、初めての菊池寛。聞こえは悪いが、復讐ものは好物でして。「恩讐の彼方に」は朝の通勤電車で読み、後悔。涙が滲んで気持ちの切替えに困った。「仇討三態」「仇討禁止令」と続く。憎い演出だなぁ。 心のひだに触れるような「勝負事」、君主の悲哀「忠直卿行状記」が印象深い。戯曲2作は爽やかな読後感。いやぁ、ほとんど面白かった! ちくま日本文学は全40巻。次はどの作家を読もうかしら。2020/09/17
すのさん
8
どれも本当に読みやすくて面白かった。いい意味で大衆的でわかりやすい。菊池寛が人気作家だったのにも十分に納得した。今風の短編から昔話っぽい短編、戯曲形式のものまで幅広く書けるんだなと。大衆にウケるツボをよくつかんでるな、としみじみ思う。2019/09/20
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