出版社内容情報
ちくま日本文学012 中島敦
ゆるぎなく美しい文章で
知的に構築された世界
目次
名人伝
山月記
弟子
李陵
狐憑
木乃伊
文字禍
幸福
夫婦
鶏
マリヤン
盈虚
牛人
巡査の居る風景
かめれおん日記
悟浄出世
悟浄歎異
和歌でない歌
河馬
【解説: 池澤夏樹 】
著者等紹介
中島敦[ナカジマアツシ]
1909‐1942。東京四谷の漢学者の家系に生まれる。一高・東大国文科を経て横浜高女の教師となる。誠実な教師生活のかたわら創作につとめ、「狼疾記」「かめれおん日記」などを発表。昭和16年、教師を辞職、南洋庁書記官としてパラオ島に赴任したが持病の喘息をこじらせて帰国。この間、「光と風と夢」が芥川賞の候補にのぼったが入賞せず、ほとんど無名のうちに死去。死後、評価が始まった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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風鈴の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
89
夭逝した作家。高校の教科書で初めて接した。印象に残り、その後、文庫本などで繰り返し読んだ。古今東西の古典から最新の文学まで渉猟した。幅広い教養を持つ作家は、現代日本にだっているだろうが、漢文漢詩も含めてとなると、限られるのではないか。志向したかどうかは分からないが、稀代の知識人になった。その上での作家活動。どのような表現を目指すか、素養があるだけに悩んだのではないか。2020/03/13
やいっち
71
仕事の車中の待機中に読む本じゃない……が、本書だけでも3回目なのでね。33歳で亡くなった…夭逝の作家と云うには作風が完成されてる感がある。殻を破れるのは作家自身でしかないのだろう。若い頃ほどヒリヒリ感なしで読めたのは、自分の感性が萎えたからか。だとしたら、淋しい。2024/09/02
優希
58
面白くて深みのある短編の数々です。中華ものの独特の漢語調が好みでした。現代を舞台にした作品もまた良し。厳選された作品のアンソロジーというイメージですね。2023/06/09
tonpie
48
中国の古典に材を取った「名人伝」「山月記」が有名だが、実はこれらは作者の「エリート意識の地獄」を内省するという動機があって書かれていることに注意したい。漢学者の家に生まれ、エリートそのものだった作者は、なぜか底抜けに明るく明晰な、向日性の作品を書いた。そして、中国文化圏から外れた南洋や古代の習俗を描く時、筆が伸びる。全体として、短期間にここまで多様な、そしてひとつひとつが高度に完成された作品を一人の青年(三十三歳で死去)が書ききった事への驚きがある。↓2025/04/27
アマニョッキ
46
1度はきちんと読みたいと思っていた中島敦。予想以上に面白くてのめり込みました。 「山月記」の美しさに奮え、「名人伝」の究極ぶりに笑い、「盈虚」に肝を冷やし、「河馬」に癒され、とヴァラエティにとんでいますが、全編にながれるテーマは『運命』と『悟り』だと感じました。作品に自己を投影して描く作家さんなのだということも、34歳の若さでお亡くなりになったということも恥ずかしながら今回初めて知りました。日本の文豪は本当に素晴らしいですね。もっとしっかり読んでいきたいとあらためて思いました。2017/06/01