内容説明
自らの足跡を刻むように文筆を続けた人。
著者等紹介
幸田文[コウダアヤ]
1904‐1990。東京向島の生まれ。父露伴より家事、身辺にわたりきびしい躾をうける。二十四歳のとき嫁いだが十年後に離婚。実家にもどり晩年の父をみる。その死を述べた「終焉」「葬送の記」で文壇に登場。つづいて「こんなこと」「みそっかす」。ほかに長編「流れる」「勲章」「笛」など。ジャーナリズムと隔たりをとり、みずからの足跡を刻むようにして文筆をつづけた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
71
文豪、幸田露伴の娘としてレッテルを貼られるも堂々として生きていた幸田文。どうも身が入らない夫の代りに働く姿は、気風の良い姐さんである。しかし、彼女の凛とした佇まいになるまでは、気性の他に女性としては遣りきれない、壮絶な経験もあった。「みそっかす」で明かされる家庭内に絶句。しかし、森先生みたいに彼女を「ままっこ」としても腫れ者扱いしてくれない人がいてくれて良かった・・・。それにしても幸田露伴って家庭では、自分の事を棚上げする、どうしようもない男なんだなと、現代から見るとそう思ってしまう。2019/06/14
ネギっ子gen
54
【幼いものは本能的に父母の和を求め、父母を愛する優しさをもっている】随筆や名高き小説「みそっかす」に、名誉森林インストラクター・山中寅文氏との対談「樹木と語る楽しさ」など14篇。巻末に安野光雅の解説と年譜。1993年刊。この文庫版全集は、ハンディにして活字が大きいのが老齢の身には有難し。「みそっかす」より。<私はことさらに美しくなかったそうである。赤茶けたうす色の髪は薄く、眼窩大きく寸づまりの鼻に/美しいものを喜ぶ父がこの芳しからぬ子を見て、/「いらないやつが生まれて来た」と父がつぶやいたという>と……⇒2025/07/27
優希
42
再読です。自伝的作品が多いですね。キリッとした文章に惹かれます。壮絶な人生を歩んできたという印象を受けました。「家族」が愛しくなるような随筆だと思います。2023/11/10
優希
42
自伝的な作品が多い印象です。キリッとした硬質な文章は父親譲りでしょうか。2022/02/11
ころこ
40
実はかなり昔にたまたま読んだ文章の印象が残っている作家で、確かに露伴がいてはじめて成立する文章はありますが、文章の独特の呼吸、描写する細部の順番の妙、人間関係の機微を間によって伝える技術、特に父の文語に対する無意識が視覚的に表現されているエクリチュールとしてのひらがなの使い方が絶妙で、評価されて良い作家だと思います。2022/06/02