内容説明
ホントにいいのかなあ、本なんかにしちまって。これは今さかのぼる二十年以上前に、頬輝かせて噺家になったばかりの諸君へ向けて書いたものです。師匠の姿に学んだこと、修業のいろは、楽屋の風習のすばらしさ、人との出会い、筋を通すということ、旅、酒、言葉、歳…こんなに正直に書いてしまったことを恥ずかしく思いつつ、これはあの頃の私の心意気でもあります。
目次
紅顔の噺家諸君!(林家をなだめる;座右の教訓;オセンコウの十倍;愚の骨頂;会話はココロ ほか)
ある噺家の構造(旅;世事;酒;塩;歳 ほか)
著者等紹介
柳家小三治[ヤナギヤコサンジ]
1939年東京生まれ。55年都立青山高校入学、落語研究会に入部。ラジオ東京「しろうと寄席」で15週連続勝ち抜き。両親の猛反対を押し切り59年五代目柳家小さんに入門。前座名小たけ。63年さん治と改め二つ目に昇進、69年17人抜きで真打ち昇進、10代目小三治を襲名。以来古典落語の本格的エースとして活躍。76年「小言念仏」で放送演芸大賞、81年芸術選奨文部大臣新人賞受賞。04年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。05年紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
93
「民俗芸能を守る会」の茨木一子さんより、この会報の1ページ目を書いていた林家正蔵さんが亡くなった後から引き継ぎを頼まれ、小三治師匠が43歳から50歳まで連載を続けたもの。後半は力が抜けすぎているところもあすが、前半はこの会の趣旨を真摯に考え、噺家の若手に向けて力を入れて書いてあるのがよくわかる。病み上がりの円之助さんが最初はロレツがまわらないながらも、次第にしっとりと聴かせるお噺をされた「大家の風情」。とある師匠に怒って、○○師匠は帰ってめちやがんの!と江戸っ子の気風がいい「筋を通せ」とか、いいですね。2014/11/30
saga
36
小さい頃、親に鈴本演芸場へ連れて行ってもらい、落語が好きになった。小三治師匠も好きな噺家の一人。独特の語り口調が、本書を読んでいても頭の中に響いてくる。そんな中に噺家の矜持、江戸落語の神髄が書かれている。今、我が家には小三治師匠のほかに志ん生、志ん朝、志の輔、枝雀のCDセットがあり、折に触れて聞いている。落語って本当にいいなぁ。2016/12/27
kinupon
34
師匠らしい視点で、師匠らしい文章で、楽しく読めました。小三治師匠良いですね^^。年をとるごとに味が出てきて大好きです。2016/01/04
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
26
小三治師匠の噺を生で聞いたのは、東西寄せで、ほんの少しだけ。 しょっちゅう聞けるお江戸の人が羨ましい……。 『ま・く・ら』や『バ・イ・ク』は読んでたので、この本も読んでみました。 若い落語家に向けて書いている……?という内容なのですが、落語家論というより、落語論かな? でも、おもしろいです。小三治師匠の落語に関する思いなどもわかります。エッセイっぽくなってるところもありますが(笑)2014/11/13
たらお
19
2014年、74歳で人間国宝になった小三治が43歳から50歳のときに連載で書いたもの。NHKのプロフェッショナルで、師匠小さんから「お前の噺は面白くねぇな」と言われた件についても書かれている。師匠が「気の長短」を高座で演じ、気の短い方がじれてくる様子をソデで見ていて、イライラしてくると師匠の足の指がピクピクと動いたことを発見する。お客からは、どうあったって見えない場所なのに「その了簡になれ」という師からの教訓はこういうことなのかと、うれしさとあきれ返ったのとで、ボーっとしてしたという話である。2015/04/05