内容説明
限りなく美しいモーツァルトの音楽。カラヤンやバーンスタイン、テイトによる交響曲、カサドシュやブレンデルやペライアのひくピアノ協奏曲、ブダペスト弦楽四重奏団やハーゲン弦楽四重奏団の室内楽、シェリングのヴァイオリン、ハスキルやグルダのピアノ、魅惑のオペラなど、演奏史に輝く名盤から新しいディスクまで、モーツァルトをきく喜びをつづる至福のエセー。
目次
序章
1 交響曲・管弦楽曲
2 協奏曲
3 室内楽
4 器楽曲
5 歌劇・声楽曲
著者等紹介
吉田秀和[ヨシダヒデカズ]
1913年9月23日、日本橋生れ。東京大学仏文科卒。現在、水戸芸術館館長。戦後、評論活動を始め『主題と変奏』(1953年)で指導的地位を確立。48年、井口基成、斎藤秀雄らと「子供のための音楽教室」を創設し、後の桐朋学園音楽科設立に参加。57年、「二十世紀音楽研究所」を設立。75年『吉田秀和全集』で大佛次郎賞、90年度朝日賞、『マネの肖像』で読売文学賞受賞。2006年、文化勲章受章。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
45
先に読んだ『モーツアルトを求めて』に触発されて、同著者の至福のエッセイの本書を約6年ぶりに再読。交響曲・管弦楽曲、協奏曲、室内楽、器楽曲、歌劇、声楽曲(カラヤン、バレンボイム、バーンスタイン、グルダ、内田光子、ハスキルとヘプラー、グールド、ブレンデル、ショルティ、マリナー、ホグウッド・・)の名盤から新しいディスクまで。限なく美しいモーツアルトの音楽を幅広い言語表現と豊かな比喩で、一般読者にもわかるように、懇切丁寧に、紹介・解説されている。『モーツアルトをきく』喜びが伝わってきた。2019/02/17
Gotoran
24
’67~’06に主として音楽雑誌に寄稿されたモーツァルトの評論を収録。交響曲、管弦楽、協奏曲、室内楽、器楽曲、歌劇・声楽曲と指揮者、奏者、楽団について。作品の知名度に左右されず自分の耳で聴き、無名の曲、奏者をも評価する、批判のための批判ではなく、長所を見出し好意的に。演奏家、創作者を尊重する吉田秀和氏。全体を捉えるとともに、細部をも徹底的に聴きこみ、奏者の意図・思いを汲取ろうとしている。その感性の鋭さ、思索の深さ、さにはそれらを表現する文章描写力に驚嘆した。流石だ。巻末解説(天野祐吉氏)に共感。↓コメに。2013/11/09
そり
20
ヴァイオリン・ソナタはほんとうに素敵な形式だとつくづく思う。バッハの無伴奏ヴァイオリンやベートーベンのピアノソナタも大好きだけれど、ヴァイオリン・ソナタにはそれらにはない楽しさがある。絡み合い、広がり、そう、音の世界がめくるめく広がっていくかのように感じられてしまう楽しさ。五重奏等の形式でも絡み合いはあるけれど、ヴァイオリン・ソナタはもっともシンプルな絡み合いの単位。親密で緊密。しかし、その楽しさは微妙な均衡のうえに成りたっているらしく。著者のいうようにベートーベンのヴァイオリン・ソナタでは↓2015/08/05
そり
15
「両者のバランスのすごく良いことである。」と著者がいわれるように、僕もシェリングとヘブラーのコンビはすごく良いと思った。ほんとうは主従関係などあるのだろうけど、どちらも出るとこは出るし抑えるとこは抑える。均衡の良さは対話をしてるようだと思えた。いつまでも聴いていられる。初めてヴァイオリン・ソナタの形式を楽しめた、喜びがある。2015/04/10
うた
9
好きなピアニストのイングリット・ヘブラーが二度三度と取り上げられていて嬉しい。彼女のモーツァルトのピアノソナタは本当に収まるべきものが収まるべきところにある感があり、何度聴いても飽きがこない。手編みのレースのようだとは言い得て妙であり、丁寧で柔らかだけれど、確固とした技術に支えられた上手さであると思う。あと吉田さんはやはりモーツァルトについて語っているときが一番楽しそうだと思う。2017/03/27