内容説明
深い感動とともに心に刻まれた音楽の数々―バッハ「ロ短調ミサ曲」、モーツァルト「クラリネット協奏曲」、ベートーヴェン「第九交響曲」「弦楽四重奏曲」作品131、ブルックナー「第九」、R.シュトラウス「ばらの騎士」、ベルク「ヴァイオリン協奏曲」など、永い間にわたり、心の糧となり魂の慰藉となった、著者の最も愛着のある曲について、その限りない魅力を明晰に語る作品論の決定版。
目次
ベートーヴェン『弦楽四重奏曲嬰ハ短調』作品一三一
ベートーヴェン『ピアノ・ソナタハ短調』作品一一一
モーツァルト『クラリネット協奏曲』K六二二
シューベルト『ハ長調交響曲』D九四四
ストラヴィンスキー『春の祭典』
ブラームス『ヴァイオリン協奏曲』
ドビュッシー『前奏曲集』
ヤナーチェク『利口な女狐の物語』
R・シュトラウス『ばらの騎士』
ブルックナー『第九交響曲』〔ほか〕
著者等紹介
吉田秀和[ヨシダヒデカズ]
1913年9月23日、日本橋生れ。東京大学仏文科卒。現在、水戸芸術館館長。戦後、評論活動を始め『主題と変奏』(1953年)で指導的地位を確立。48年、井口基成、斎藤秀雄らと「子供のための音楽教室」を創設し、後の桐朋学園音楽科設立に参加。57年、「二十世紀音楽研究所」を設立。75年『吉田秀和全集』で大佛次郎賞、90年度朝日賞、『マネの肖像』で読売文学賞受賞。2006年、文化勲章受章。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そり
21
著者はモーツァルトの「クラリネット五重奏曲」を想うと、「『神のようなモーツァルト』という言葉が、つい、口許まで出かかってしまう。」らしい。僕はクラシック音楽のことをよく知らないのだけど、同じようなことは思う。初期のピアノソナタの天衣無縫な感じ、それから後のほうの、なにか凄みすら感じさせる交響曲やクラリネット協奏曲。作曲者自身を越えた、まさしく天与の才としかいいようのないものがある。だけど、モーツァルトの、彼の晩年の、妻への手紙は、哀しみばかりで、どこまでも人間で、狂おしくなる。2015/03/08
風に吹かれて
15
もちろん、記述してある曲を聴きながら、読了。例えば、フォーレ『ピアノと弦のための五重奏曲第二番』。ベートーベンとの比較や最初の室内曲であるバイオリン・ソナタについてのおしゃべりなどが続き、五重奏曲の話を読む前に、久しぶりにカプソン兄弟などによるCD5枚組室内楽全集を楽しみ・・・ということで、読み終えるまでにとても時間がかかったけど、吉田秀和先生の本は、とても楽しい(楽譜が出てくる部分は除いて)。詩など関連するヨーロッパの文学などの知識も深く吉田先生の本は、いつも、健やかな気持ちで読み終えられる。2019/04/02
うた
12
好きな書き手が好きなことについて好きなような語っているのを読むのは楽しいことだ。文章が上手い人ならなおさらで、自分が好きなことならもっと楽しい。紹介されている曲のなかではハイドンのひばりやドビュッシーの前奏曲集が好き。日常的に聴いて無理がなく、かつ飽きがこないくらいに出来もいい曲。吉田さんみたいにそういう曲をたくさん知りたい。2015/12/24
Windseeker
7
音楽について文章を書くのは本来ものすごく難しいことなのではないか、と思うことがある。高名な音楽評論家の文章でも、コトバが上滑りするような違和感を感じることが少なくないのだけれど、個人的には吉田秀和は数少ない例外の一人。この本も、読んでるとなぜか無性に原曲が聴きたくなる力を持った文章が続く。古い新潮文庫版を持っているのだが、何度も読み返すうちにすっかり本の角が丸くなってしまった。
鳩羽
6
崇拝するような好きだったり、ほんとはそんなに好きじゃないけど外せない「好き」だったり、思い出とセットになっていたり、理由の分からない好きだったり。好き、と、音楽、が多彩に組み合わさって、どこを読んでも(分からなくても)おいしかった。こんなふうに真摯に、おしゃれに誘うように書かれると、ついCDを買い足してしまうじゃないですか。2013/04/09