内容説明
「分別」のある姉エリナーと、「多感」な妹マリアン。エリナーが思いを寄せるエドワードは、ぱっとしないが誠実な青年。マリアンが激しい恋をするウィロビーは、美貌と気品を兼ね備える情熱の男性。この似合いのカップルに、それぞれ不似合いな人物が複雑に絡み、姉妹の結婚への道は紆余曲折する。19世紀英国の田園を舞台に繰り広げられる恋愛小説の傑作。初の文庫化を読みやすい新訳で実現。
著者等紹介
オースティン,ジェイン[オースティン,ジェイン][Austen,Jane]
1775‐1817。イギリスの小説家。おもに結婚話を題材とした、平凡な日常生活のドラマを皮肉とユーモアをもって描き、完璧な芸術へ高めたと言われる。一見同工異曲の結婚話だが、六冊の長篇小説のヒロインたちはすべてタイプが違い、異なった趣向が凝らされていることも特筆に値する
中野康司[ナカノコウジ]
1946年神奈川県生まれ。青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
378
いかにも19世紀前半に書かれたイギリスの小説、まさしくジェイン・オースティンの小説といった趣きが横溢する。そして、デヴォンシャーの風土感も物語を通奏低音のごとく支えている。分別を表象する姉のエリナー、一方多感を表象するであろう妹のマリアン。2人の恋愛の物語なのだが、その進行の度合いの何と悠長であることか。にもかかわらず、結末部の急展開は、これまた何としたことだろう。これで当時の読者たちは満足したのだろうか。否、当時どころか現代のイギリスの読者たちも。あるいは、こうであってこそオースティンか。2023/02/11
のっち♬
118
財産相続を受けられなかったダッシュウッド夫人と娘たちは、引越しして従兄妹の後援で社交生活を送る。分別があって思慮深いエリナーと、情熱的で多感なマリアンの姉妹が本作のダブルヒロイン。恋の仕方も当然真逆で姉は素直に感情を出せない、妹は衝動的過ぎと、性格はどっちに傾いても困りものだ。そのあどけなさが拡大鏡となって、登場人物の人間臭さをテンポ良く炙り出してゆく様はいかにも著者らしいところ。もっとも、造形面でもプロット面でもいくらかマンネリが目立つのは否めない。特に妹の結末はあまりに駆け足かつ力技で余韻に浸れない。2017/07/16
優希
90
分別の姉と多感な妹の恋の物語と言えると思いました。冷徹さ、感情的な2人と彼女たちを取り巻く男性陣、応援する周囲の婦人たちが見事に描写されています。登場人物たちの抱える疎かや恋の行方にドキドキさせられました。深い傷と良心。結末に救いが見られますが、途中途中でも救いを差し伸べる展開があるのに引き込まれます。2019/12/30
星落秋風五丈原
68
【ガーディアン必読1000冊】性格の異なる二人の恋物語であり、映像化も多い。しかし原作でここまでブランドン大佐がこき下ろされているとは驚いた。いや当初当て馬だったのはよくわかるよ。しかし彼はまだ35歳で現代感覚で言えば独身でもおかしくない。いやむしろ金持ちだし優しいし魅力的な結婚相手では?それなのにマリアン「三十五歳というのは、結婚には無縁な年齢よ」エリナー「そうね 三十五歳と十七歳の結婚は考えないほうがいいかもしれないわね」手厳しい!2021/03/28
miyu
63
恋愛小説や男女の感情の縺れを綴った作品は大の苦手だ。そんな私にとってさえも、オースティンは永遠に繰り返し読み続けるであろう作家の一人。これ、前に読んだのはいつだったかなぁと常に考えて手に取る。この作品の登場人物のブランドン大佐が大好きだったのは確か10代の頃。35歳がかなりの大人に思える年頃だったが、もちろん今の私はそれが大変な幻想だったことを知っている。しかしオースティン時代の35歳の男性はマリアン曰く「結婚には無縁な年齢」「感受性の鋭さや物事を楽しむ繊細な能力が多少衰える」って、かなり酷い(。´Д⊂)2015/01/19