内容説明
ラストエンペラー、満州国皇帝溥儀の妻の凄絶な生涯。フランス租界に育ち西洋文化を身につけた少女が、清朝最後の廃帝に嫁いだことで経験する数奇な運命。宮廷での退廃と無益な日々。満州国成立によって皇后になるが、日本敗戦、そして満州国崩壊。戦争と革命の時代、男たちの権力に抗いながら悲劇的な結末をむかえた女性の一生を綿密な調査と独自の視点で描くノンフィクションノベルの傑作!第八回新田次郎賞受賞作。
目次
1 紫禁城に嫁して―北京一九二二‐一九二五(暁の結婚;紫禁城の妖怪たち ほか)
2 此処よりほかの何処かへ―天津一九二五‐一九三一(天津に帰る;日本の影 ほか)
3 夢なければ恐れなく―満州一九三一‐一九三四(大連へ;苦い再会 ほか)
4 水の炎―満州一九三四‐一九四六(腐った棘;菊と蘭 ほか)
著者等紹介
入江曜子[イリエヨウコ]
1935年東京に生まれる。慶応義塾大学文学部卒業。作家。『我が名はエリザベス―満州国皇帝の妻の生涯』で第八回新田次郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
25
ノンフィクションだと思い入手したら小説でした。清王朝に興味がありますので、結果的に違う視点から満州史を見れたような気がして、良かったです。ただ育ちも容姿も才能も恵まれながら、悲惨な人生を読むにつれ哀しくなりました。2023/07/19
みなみ
4
かの「ラストエンペラー」溥儀の皇后となった婉容を主人公にした自伝風の物語。先に感想を見てそんなに悲惨なのか…?と読んでいったら、読み進めるほどにどんどん婉容は悲惨な境遇に陥っていくのだ。せっかく離婚できるかと思ったのに川島芳子に連れ出されるのは気の毒というほかない(いや、気の毒という言葉も軽いのでは…)作者という第三者の視点ではなく、何も知らされないでいる婉容の一人称で語っている。なので本当に、五里霧中を歩いているような不安と不吉さがいつもある。この語り口でなければこの作品は成り立たないと思える。2020/03/09
ゆず
2
「ラストエンペラー」として名高い愛新覚羅溥儀の皇后、婉容の一人称の形で書かれた自伝風小説。 仮にも一国の皇后と仰がれた身分の女性が、こんな凄惨な最期を遂げていたことに衝撃を受けました。 英語を学び、テニスを楽しみ、同時代のどの女性よりも進んだ教育と女性観のなかで育った彼女が、ドロドロとした宮廷の因習のなかに封じ込められ、なすすべもなく崩壊への道を辿らざるを得なかったことがひたすら悲しいです。 2019/10/25
ひこまる
1
「運命」というものについて深く考えさせられた一冊。婉容にとっての幸福とは一体どういうものだったのだろうか?
あまね
1
『女にとって束縛は免れえない運命で、女がこの束縛から離れようとすれば、いっそうはげしい苦しみに出会う』という、ルソーの言葉が思い浮かんだ。2011/05/29