内容説明
先進資本主義諸国の繁栄は、第三世界の貧困化、生態系の貧困化、心身条件の貧困化の上に築かれている。『資本論 第一巻』における再生産論と蓄積論こそこのような展望のもとに再読され、蘇生をまつ魅惑にみちたテキストである。
目次
第1巻 資本の生産過程(続)(相対的剰余価値の生産;絶対的剰余価値と相対的剰余価値の生産;労働賃金;資本の蓄積過程)
著者等紹介
今村仁司[イマムラヒトシ]
1942年生まれ。京都大学大学院博士課程。東京経済大学教授
三島憲一[ミシマケンイチ]
1942年生まれ。東京大学大学院博士課程。東京経済大学教授
鈴木直[スズキタダシ]
1949年生まれ。東京大学大学院博士課程。東京医科歯科大学教授
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感想・レビュー
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roron
1
剰余価値とは何なのかを説いた1巻の前半部分から、剰余価値がどう資本に変化し、蓄積されるかに進んだのが後半部分。同時に自営生産者が土地と労働手段を奪われ、賃労働者化していく過程が歴史的に記述される。そして資本がいつか労働者を吸収できなくなる「相対的過剰人口」の概念は、低成長時代の非正規雇用の拡大、移民受け入れなど、現代の現象にも当てはまる。資本主義は常に流動的な人を求める。労働価値説の妥当性は別として、資本主義が人の生活をどう変えてしまうのかという視点が、マルクスの魅力なんではないだろうかと。2018/12/08
素人
1
国債こそが投機市場と銀行支配を生み出した、という24章6節の指摘が面白かった。ただの紙切れにすぎない銀行券に信用を与えているのは国債であり、国債はさらに近代的税制によって裏付けられているらしい。このへんのことをもっと敷衍した本が読みたい。2018/07/29
1
再読。というか、現代そのまんまな状況で笑える。マルクスの文学的な才能が遺憾なく発揮されており、実際のルポタージュが多めで、何も難しくはない。しかし、資本主義が発展してゆく段階で、いつも尖兵=犠牲になるのは、子供や女性なのを、マルクスは「怒り」を持って書いている。あるいは、資本主義が産業予備軍を絶えず産出しながら包摂する、そして使用価値がなくなったら排除する今も昔も変わらない。だから問題なのだが。2017/06/07
ぷらんとぱいん
1
上巻の論理的抽象的な資本についての分析から、具体的に資本がどのように労働者から剰余価値を搾取していくのかが野蛮なまでに暴きだされる。自己増殖を欲望する運動性がいかに人間を殺すのか。持続可能性を度外視して自分自身すら破却することもある欲望する運動性。2014/12/23
たねうま
0
23章資本制的蓄積、24章の原初的資本蓄積の例がとても恐ろしく面白い。訳者あとがきでは、延々と資本論の意義をあえて語っていたが、この訳の初版から10年現実はよりマルクスの語った状況に近くなっている。しかし、訳者あとがきでマルクスのプロパガンダ的悪影響という言葉が出てきたのは笑った2015/09/27