出版社内容情報
第二次大戦中、アメリカは陸海軍で日本語の修得を目的とする学校を設立した。著者の回想によるその実態と、占領将校としての日本との出会いを描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
9
優。面白かった。社会人類学者であるハーバート・パッシンが、第二次大戦中、陸軍日本語学校に入り日本語教育を受け、占領下日本において、日本社会に遭遇した半自伝。学生たちの軍当局(というか軍人)に対する反発心。占領下日本社会で遭遇した日本人たちとの挿話。観察対象を冷静に分析しながらも、対象であるひとびとに共感を寄せる。あるいは、共感を寄せつつも、一線を越えない冷静さ、が垣間見える。日本語、日本社会に対する分析も、なるほどなぁ、と感じ入る。当事は知らず、さすがに今は万葉集を諳んじる農民は多くはないとは思うが。2020/04/30
Gamemaker_K
7
仮に太平洋戦争の時に、英語を敵性語としなかったとしても大勢に影響はなかったとは思うが、やはり英語を敵性語とみなしたのは愚策だったと思うよ。…アメリカの方が日本語の書き言葉を習得する苦労を思えば、英語を勉強する苦労にも耐えられるかもしれない、ような気がする。2020/07/13
Yuki2018
5
著者は米国の文化人類学者で、WW2時代に陸軍で日本語教育を受け、戦後は占領に関わった人物。本書は1980年頃に書かれたもののようだ。陸軍日本語学校での言語学習と、その後の実地活用を振り返るエッセー。言語学習論・文化論としても興味深いが、一番考えさせられるのは米国が持っていた覇権国家としての特性のようなもの。本書は40年代が舞台で、当時の米国が持つ理想主義的な考えが至る所で感じられる。これこそ米国が戦後圧倒的な力で世界の覇権を握った要因だろうし、昨今これが曲がり角を迎えていることを強く感じさせる。2020/06/26
shushu
2
後年多くの日本研究者も生んだWW2の日本語学校について自分が何も知らないことを知った本。海軍と陸軍に分けて存在し、待遇、気質等も全く違ったとか、短期間に高レベルに上げたけどそもそも知的レベルの高い人を選抜したとか、結局日本に関わらずに終わった人も結構いるとか。それにしても気になるのが翻訳者。。。2021/05/01