出版社内容情報
非理性的な力を脱する一方、人間疎外も強まった近代社会。その中で人間のコミュニケーションへの信頼を保とうとしたハーバーマスの思想に迫る。
中岡 成文[ナカオカ ナリフミ]
著・文・その他
内容説明
人間には暴力・抑圧に支配されず対話を交わし、相互理解に到達する理性の力が与えられている。宗教や因習など非理性的な力を脱した近代社会において、民主的な原理はようやく一人立ちしたが、同時に支配のシステムは強大に、そこから生じる人間疎外も強固になり、コミュニケーション的理性の可能性は十分には実現できなかった。異なる利害を持った人間が意思を疎通し、行為を調整しあうにはどうしたら良いのか。あくまでも人間のコミュニケーションへの信頼を保とうとするハーバーマス。その全貌をとらえた一冊。
目次
プロローグ コミュニケーション的理性への信頼
第1章 批判的社会理論への旅立ち
第2章 制度と言語―イデオロギー批判への取り組み
第3章 システムと生活世界
第4章 近代合理主義と人間のコミュニケーション
第5章 ポストモダン思想との対決
第6章 多元的社会における法と道徳
エピローグ 政治的実践の中で
終章 対話は世界を変えられるのか―その後のハーバーマス
著者等紹介
中岡成文[ナカオカナリフミ]
1950年生まれ。京都大学大学院文学研究科単位取得退学。大阪大学大学院文学研究科教授を経て、一般社団法人哲学相談おんころ代表理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はっせー
95
本当にためになった! この本はハーバーマスの考え方や理論について分かりやすく書いてあるものである。中岡さんが専門用語をなるべく使わずに分かりやすく書いたと本のあとがきに書いてあるように本当に分かりやすかった。ハーバーマスは様々な知識人と討論した。その結果としていまの理論がある。討論することによって自分の考えが洗練してきたと感じる。この本を読みコミュニケーションの必要性が一段と理解することができた。コミュニケーションの可能性を信じたいと思った!2019/11/02
壱萬弐仟縁
36
現社の授業でも紹介したい。2022/07/30
壱萬弐仟縁
28
思想家に対し「冷静な頭脳と温かい心」の持ち主が最大の賛辞(012頁)。『公共性の構造転換』は、18および19C初期の英仏独で市民的公共圏、「小さいが、批判的に討議をおこなう公共圏」が形成されたと主張する。独で「普遍的な読書する公衆」が、仏で社交界のサロンが、英で喫茶店が舞台となって「印刷物をつうじて文化、情報、娯楽」が伝達され「多かれ少なかれ討議のかたちで論争がたたかわされる」。「文化を論議する公衆」は私生活中心主義的な「文化を消費する」公衆に変質(「構造転換」し)市民的公共性は崩壊(057頁)。2018/05/24
かんがく
15
現在の私の興味関心にかなり合致している哲学者なので読んだ。ハーバーマスの思想をイチから解説していくというよりは、他の哲学者との論争を紹介し、その対比の中でハーバーマスの思想を明らかにしていくという書き方なのでやや難しい。ただ、討議や対話を通して討議や対話についての哲学を作り上げていくという姿勢はかっこいい。2023/05/30
ア
5
途中かなり難しいが、大変勉強になった。相手からの批判に応えつつ、相手の理論を批判的に取り込んで自身の理論を進化させてきたのが、ハーバーマスのすごいところ。2023/01/30