出版社内容情報
哲学が扱う幅広いテーマを順を追ってわかりやすく解説。その相互の見取り図を大きく描きつつ、論理学の基礎へと誘う大定番の入門書。解説 飯田隆
吉田 夏彦[ヨシダ ナツヒコ]
内容説明
「認識論」「存在論」「形而上学」「倫理」「神」「美」「数学」―現代の哲学はますます細分化され、各領域の概要を捉えることも、それら相互の関係をつかむことも容易ではない。しかし「哲学」の名に値するために不可欠なのは、その主張が反証を示したり、批判したりできるような論理に基づいていることだ。そうした議論の筋道の正しさを支えるのが、論理学である。本書は、論理学の基本的な考え方を一から説くとともに、そこで学んだ正しい推論の道具立てを用いて、哲学の諸問題を平明な筆致で解説する。多くの哲学徒に影響を与えた、他に類をみない入門書。
目次
第1章 哲学の諸分野
第2章 二つの落語
第3章 論理学
第4章 理論の構造
第5章 集合論
第6章 抽象と具体
第7章 現象と実在
第8章 いくつかの問題
著者等紹介
吉田夏彦[ヨシダナツヒコ]
1928年生まれ。北海道大学助教授、東京工業大学教授、お茶の水女子大学教授、立正大学教授などを歴任し、現在東京工業大学名誉教授。専門は科学哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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弥勒
8
哲学は論理的でなければならない。そして、論理は数学、とくにZFS集合論(別名:公理的集合論)を基礎として成立しているので、数学を無視して哲学をすることはできないことが述べられてゐた。哲学や論理学を学びたい人にとつては優れた入門書といへる。しかし、筆者自身も断つてゐるやうに、哲学の歴史にはほとんど触れてゐないし、具体的な論証がされてゐるわけでもないので、思想史みたいな本を期待されてゐるかたにはお薦めしない。2017/01/28
Z
6
論理学というと、哲学寄りと、数学寄りがあるが、タイトル通り哲学寄り。ただ、具体的な論理記号等の解説よりも、哲学一般を軽く解説し、その後、論理学にまつわる、哲学の議論や、論理学の平易な解説をする。岩波ジュニア新書に入っていてもおかしくない語り口。一番初めの入り口にはいいと思うが、これ以上の本を読みたかったので、たいして感想なし。2019/11/04
愛楊
2
本書は1997年4月、新潮社より刊行された。数学基礎論に関する第5章だけが良かった。M論証やP論証、知覚心理学における色の六面体といった概念はウェブ検索しても知ることができず、内容が古びている。本書を要約すれば、対立する哲学的立場を同型写像によって両立させるというものであり、間々ある主張である。本書の評価がなぜ高いのか分からない。本書で論理学に入門する必要がある読者は「数学的構造」の意味さえ分かっていないのではないか。認識論への論理学の無理な当てはめによって哲学は錯誤に陥ったといっても過言ではないのだ。2024/06/24
クレストン
2
科学哲学が専門の方による、論理学と哲学の入門書。まず哲学の概念をいくつか取り上げる。幕間的に落語を取り上げ、そして論理学を取り上げる。その後は、数学基礎論的な見方で論理や集合論、終盤で存在や認識の話でぐっと哲学に踏み込む。論理学の本は基本的に数理論理学を意識した本が多いが、この本はそこも意識しつつ、数学的な部分、哲学的部分を記号などをほぼ使わず大きく話を展開していっている。広げすぎて難しくなっているような気がするが、文章でひとまず大まかにこれらのテーマを拾えるのはありがたい。2022/04/30
代拿邁人☆
1
この本だけだと数学基礎論の具体的な話は分からないが、元々の分析哲学の長所であった論理学から存在論、認識論の問題を明確化するという点に関して理解が深まったし、包括的でかなり良い入門書だった。2023/10/29