出版社内容情報
20世紀以降、戦争は世界と人間をどう変えたのか。思想の枠組みから現代の戦争の本質を剔抉する。文庫化に当り「テロとの戦争」についての補講を増補。
内容説明
20世紀、戦争は人と世界をどう変えたのか。そしていま、戦争が行き着いた極限の姿とは。「戦争」を「思想」の枠組みで捉え、「思想」を「戦争」の視角から読み直す、異色の講義録。理性、秩序、啓蒙といった西洋思想における「光」の外には、非理性、無秩序、野蛮、暴力などの「闇」が蠢く。戦争は闇が支配する「夜の世界」の現象、近代の理性が沈む夜だ。「夜の思想家」バタイユ、レヴィナス、ブランショらを導き手に、ヘーゲル、フロイト、ハイデガーらの思想を読み解き、近代理性が必然的に生み出した世界戦争の姿を明らかにする。文庫化にあたり補講「『テロとの戦争』について」を増補。
目次
世界戦争の時代
戦争の全体性
“夜”に目覚める
“光”の文明の成就
戦争の近代
世界戦争
ヘーゲルと西洋
露呈する“無”
“世界”の崩壊
“未知”との遭遇
アポカリプス以後
おわりに
二〇年目の補講―テロとの戦争について
著者等紹介
西谷修[ニシタニオサム]
1950年愛知県生まれ。東京大学法学部、東京都立大学大学院、パリ第8大学などで学ぶ。フランス思想、とくにバタイユ、ブランショ、レヴィナス、ルジャンドルらを研究。明治学院大学教授、東京外国語大学大学院教授等を経て、立教大学大学院特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅー
8
★★★『哲学史入門Ⅲ』の推薦図書である。『構造と力』はベタすぎる気がして本書を先に読む。「現代思想」について世界戦争という切り口を使って解説した本だ。タイトルが文学的だが、中身は大学の講義を元にしているだけあって哲学史の良い副読本となっている。ただし「現代思想」と言ってもヘーゲルからスタートしてハイデガー、バタイユ多めなので、人によっては期待と違うかもしれない。本書が書かれたのは湾岸戦争の頃のようだが、世界戦争への入口をのぞきこんでいる現在だからこそ、読み返す価値のある本ではないだろうか。推薦図書も多め。2024/07/02
にたいも
7
大学1・2年生次科目「現代思想」で戦争を論じた講義録。客観的すぎる記述に、読んでいて悲しくなり胸が詰まるところもあるが、現代で語られていることの源を知ることができた。〈〈ヒロシマ〉の悲惨さは、多くの人が死んだということよりも、いずれ死を運命づけられたにしても人びとがこの一瞬を生き延びたからこそ生じたのです.〉(1995;2015)2024/05/26
sk
6
「夜」としての戦争をテーマとした現代思想入門。文体が冴えている。2021/10/11
暗頭明
5
単行本が出た時(1995年)に読んで以来、20年ぶりの再読。メモ:その後の20年について補講(「テロとの戦争について」)、参考文献はこの20年を反映して加筆修正、p.18の「ところがここ二〇年近く」は1995年版のままの表記(つまり文庫版発行時からすれば四〇年近くの謂)、『神様はつらい』への言及(2015年『神々のたそがれ』として上映されたのを見、翻訳も読んだが、本書で紹介されていたことは全く思い出せなかったため、今回の再読でその名を目にして驚愕する)。2015/10/24
kentaro mori
2
面白い!「戦争」によって市民であることを自覚し、「戦争」によって「世界」を意識することができる、という皮肉。しかしこれが現実だ。2019/09/17
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