出版社内容情報
産業が必要とする技能は、どこで、どのように獲得されたのか。学校、会社、軍隊など、近代日本を支えた人的資源を造ったシステムの中核を探る。
猪木 武徳[イノキ タケノリ]
内容説明
天然資源が豊かではない日本にとって、人材の重要性は強調してもし過ぎることはない。経済的豊かさを規定するのは「人」であり、「人」しかない。では近代日本の経済発展を人材形成の歴史として読みなおしたとき、どのような特徴が浮かびあがるのか。本書では、経済成長をもたらした人的資源(human resources)の形成と配分を、学校、会社、軍隊などの教育・訓練の姿を中心に検証する。「持たざる国」日本では、知識と技能はどのように修得され、産業活動の現場に動員されたのか―。江戸期から現代への変遷をたどり、歴史と理論の両面から日本のシステムの核心に迫る。
目次
第1章 江戸の深さ、明治の新しさ
第2章 工業化と労働力
第3章 軍隊と産業
第4章 戦後の学校
第5章 工場内の人材育成
第6章 高学歴化したホワイトカラー
第7章 官吏から公務員へ
第8章 移民と外国人
著者等紹介
猪木武徳[イノキタケノリ]
1945年滋賀県生まれ。京都大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学大学院修了(Ph.D.)。大阪大学経済学部長を経て、国際日本文化研究センター所長。2016年3月まで青山学院大学大学院特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
3
日本の人的資源の開発と配布についてデータに基づき、論じた本。学制から始まり、OJTでの職場教育や官僚制、移民などの公的人的資源配布まで広く論じていて面白い。自分の中の知識を再確認出来ました。2016/12/12
まるさ
2
人材育成についての日本近現代史。企業のOJTがもたらした人材育成効果についてもっと深堀してほしかった。2017/03/06
こたつ
2
人材育成システムを明治以降から歴史的に、また教育機関や工場内での教育を検証しています。概ね機会は平等に開かれており、その中での競争が働くことによって人材の育成及び供給が成り立ちます。また、OJTは「定義できない知」の習熟に有効ですが、日本はその強みに早くから気づいて広く普及していたとのこと。官僚制度内での人材育成システムも1章を割いて論じています。漠然としたイメージで語られがちな人材育成システムについて理論的な根拠を与えてくれる1冊でした。2016/07/17
tonit
0
近代からの丹念な教育史。OJTを通じた学校と工場の連動的教育システムを論じる。以下個人的備忘メモ。 ・薩摩藩の「負けるな」「嘘をつくな」「弱いものをいじめるな」という3原則は印象に残った。 ・日本人は流動性が低い、労使協調的である、閉鎖的で海外に出ない等の固定概念への批判は興味深い。特に前二者については海外の日本企業が直面する課題だが日本の歴史を学ぶことが示唆に富むか。 ・教育は投資的側面のみならず消費であるという指摘については得心。 ・トリビアとしてアメリカのペンドルトン法設立の経緯は滅茶苦茶面白い。2017/01/21