出版社内容情報
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近世儒教を代表し、東アジアの思想文化に多大な影響を与えた朱子学と陽明学。この二大流派の由来と実像に迫る。通俗的理解を一蹴する入門書決定版!
内容説明
儒学は、中華帝国の正統思想として2000年の長きにわたり君臨してきた。その儒教史上に燦然とかがやく二つの学派がある。南宋の朱子によって体系化され、やがて明・清および朝鮮で体制教学となった朱子学であり、それを明の王陽明が批判的に継承し展開した陽明学だ。日本を含む東アジアの思想文化に決定的影響を及ぼしたこれらの流派は、はたして何を唱えたのだろうか。朱子学・陽明学が誕生した時代背景とその問題意識に焦点をあてることで、通俗的理解とは大きく異なる実像が見えてくる。両教説の異同を明快に説き、壮大な思想体系の全体をあざやかに一望する、入門書の決定版!
目次
朱子学・陽明学とは何か
士大夫の時代
朱子と王陽明の生涯
中国における展開
日本における受容
性即理と心即理
格物と親民
天理と人欲
礼教と風俗
理と気
思想史における唐宋変革
儒仏道三教の関連
経学史のなかで
東アジアにおける近世
朱子学・陽明学の未来
著者等紹介
小島毅[コジマツヨシ]
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は中国思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
42
宋代に設立した朱子学と明代に成立した陽明学は一般に言われているような基準で単純に分けられるものではない。著者は歴史的経緯からどのように思想を形成していったのかを比較している。どちらも孔子の思想を正しく受け継ぐものだと主張しているが、官僚としては地方官しか経験していない朱子と官僚として成功した部類に属する王陽明の違いは出ている。一方は出版物を編集することで思想を広めようとしたのに対し、他方は政治の場で実践できるものかどうかを重視したが、濃淡の違いぐらいしかないように見える。両者は現代にも影響を与えている。2024/03/26
壱萬参仟縁
17
宋代。朱子学⊂道学⊂宋学(025頁)のようだ。わたくしは蘇軾の漢詩を岩波文庫で読んだことがあるので、関心がある。士大夫は、「書物を学習する人たち」(038頁)。現代の士大夫が読書家、読書会なのかもしれない。地域文化資本のローカルエリートになるには、僕は読書会が不可欠だというのが裏付けられると思った。心強い士大夫になる必要がある。市民の先導者として。日本にも多くのODが田舎でひっそりと暮らしている人もいるだろう。我々ODこそが、文化の伝達者なのだ。わたくしは読書会を通じて地域貢献する用意をした。2014/01/03
小木ハム
16
入門とあったので手に取りましたがなかなか難しかった。朱子学・陽明学とはなんぞや?を懇切丁寧に説くというより、時代背景をなぞる形で概要を埋めてゆく内容となっています。しかしホントの入門書と並読することで一層理解が深まる内容であると思います。朱熹(出世欲がない)が唱えた朱子学は官学、性即理説。王陽明(官僚エリート)が唱えた陽明学は民学、心即理説。立場と唱えた学問がクロス対称になっているのが印象的。印刷技術の発達→電子通信技術の発達ときて、思想文化の広がりは、時間を越え、空間をも越えたという表現が刺さりました。2018/11/26
ntahima
14
【Kindle-214】標準タイム3時間46分。読みたい本の増殖は読む速度を大幅に上回っている。だから何を読むかはけっこう悩みの種。先日のアアナノ帯騒動のお陰で、長年の懸案であった日中韓の思想史にやっと手が伸びる。先ずは感謝!読みながら思想を伝えることの難しさを改めて痛感する。師の思想を伝承・発展させる者、取り違える者、師の威を借りて自説を説く者、原理主義に走る者、そして揺り返しとしての原点回帰。♪回る回る思想は回る♪ 加えて、思想家の理解と民衆のそれとの乖離。要再読!さて、この後、類書連読行きます!笑 2018/01/17
MUNEKAZ
12
もとは放送大学のテキストだけあって、双方の違い・特徴をわかりやすく説明している。ただ内容は決してやさしくはないので、自分の乏しい知識でどこまで理解できたかは微妙なところ。体制側の学問という印象の朱子学が在野の知識人から、民衆の実践的な学問という印象の陽明学がエリート官僚の側からそれぞれ起こったものだということは少々意外。また朱子学の普及に、当時発明された活版印刷術が活用されていたというのも面白い。著者も述べるようにルターの宗教改革を彷彿とさせ、メディアの変化が思想の変化にも影響を与えるよい事例だと思う。2020/03/14
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- 古代日本人の宇宙観