出版社内容情報
〈正統〉な学者が避けた分野に踏みこんだ、異端の民俗学者・中山太郎。本書は、売買春の歴史民俗誌に光をあてる幻の大著である。
内容説明
柳田國男と同時代に活動しながら、いわゆる正統な学者たちが避けたテーマへと果敢に分け入った「異端の民俗学者」中山太郎。主著となる本書を含め、その著作群は一見どぎつい題材とは裏腹に、史料考証を積み重ねたものである。不特定多数の男女が交わりあう各地の神事祭典や各種乱婚・貸妻制など、具体的で膨大な習俗を挙げつつ売買春発生の背景を考察。奈良時代以前の巫娼、平安の浮かれ女、鎌倉の白拍子、室町の辻君と、歴史を追って、つきせぬ情熱で売買春の諸相を総覧する。長らく入手不可能であった幻の書の文庫化。
目次
第1章 売笑の発生的考察
第2章 国初時代
第3章 奈良時代
第4章 平安時代
第5章 鎌倉時代
第6章 室町時代
第7章 江戸時代
第8章 明治時代
著者等紹介
中山太郎[ナカヤマタロウ]
1876年、栃木県足利郡生まれ。東京専門学校(現・早稲田大学)卒業後、報知新聞社などで記者として活動。在職中に柳田國男の研究に触れて感銘を受け、民俗学研究の道に入る。民俗歴史資料を渉猟するとともに聞き書きも交えて、売春・婚姻・巫女・若者・盲人・祭礼・信仰・葬儀・伝説・職人など、従来の研究者が避けてきたテーマを含む幅広い分野をまとめあげようと試みた。1947年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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桑畑みの吉
4
売春の事を昔は「売笑」と言ったらしい。本書は古代から明治時代にかけての売春の歴史を解説も含めて700ページで論究する大作となっている。売春と言っても巫女や尼の様に宗教的な結びつき、音楽や踊りの様な芸能との結びつき、もちろんただ体を売るだけの下層の娼婦も居たりして時代と共に多くのバリエーションがあるのが興味深かった。本書は昭和2年に出版された同名タイトルを原本にしている。今では常用されない漢字が多用されており非常に読みにくい。また漢文で書かれた引用資料も現代語訳がなく殆ど理解できないのが残念であった。 2021/04/05
水菜
3
時代性とはいえ、女性蔑視的な書き方に違和感を感じた。引用文や挿絵を追っていくだけも歴史の流れを感じられて楽しい。2014/02/18
メーテル/草津仁秋斗
1
日本における売笑の歴史を、様々な文献や里謬、現在行われている民俗を手掛かりに解き明かした本。戦前であるので考え方がやや昔気質な面はあるが、しかし当時だからこそ残っていた資料なども駆使されていて、とても参考になる。もっと再評価が進んで、民俗学の幅が広くなればいいと思う。2015/05/15
鏡裕之
1
遊女・娼婦の起源は巫女にある……。そこから日本の娼婦の歴史を始めて姪島で。力作、大作と言っていい。しかし、著者は娼婦の存在に対して非常に否定的である。娼婦なんて存在は一切なくなってしまえばいいと思っている。偏見で書かれてしまったのが、なんとも残念、なんとがっくり。2013/12/09