出版社内容情報
荘子の思想をゆかいな物語で伝える「雑篇」。日本でも古くから親しまれてきた「漁父篇」や「盗跖篇」など、文学性に富んだ長編作品が収録されている。
内容説明
宋の詩人・蘇東坡が指摘するように、「雑篇」は成立年代が遅く、『荘子』が持つ強烈な思想性もやや薄められている。しかし、そのために文章の自由度は高く、全篇が人を食った痛快な物語が彩られている。例えば偉大な思想家・孔子さまも、その素行を改めさせようと説得を試みた盗人に、「二度とほざくんじゃねえぞ。てめえのいってる道なんざあ、からっけつの中身なしで、でまかせのうそっぱちよ」とやりこまれ、逃げ出すしまつ。漁父篇や盗跖篇、説剣篇、譲王篇など、文学作品として古くから親しまれてきた物語を、正確ながらも娯楽性を重視した、ゆかいな福永・興膳訳で読む。
目次
庚桑楚篇第二十三
徐無鬼篇第二十四
則陽篇第二十五
外物篇第二十六
寓言篇第二十七
譲王篇第二十八
盗跖篇第二十九
説剣篇第三十
漁父篇第三十一
列御寇篇第三十二
天下篇第三十三
著者等紹介
福永光司[フクナガミツジ]
1918‐2001年。大分県生まれ。中国思想史家。老荘思想・道教研究の第一人者。京都大学名誉教授
興膳宏[コウゼンヒロシ]
1936年福岡県生まれ。中国文学者。中国文学理論の研究により、2013年学士院賞を受賞。現在、京都大学名誉教授、財団法人東方学会理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
34
分厚いので、現代語訳を読んで興味を持ったのを書き下し文で音読しておくとよいだろう。「徐無鬼篇第24」で、徐無鬼は魏の隠者。曰く、「自然の理に背いてよこしまな心を抱いてはならず、技巧を弄して人に勝ろうとしてはならず、謀略を用いて人に勝とうとしてはならず、戦争によって人に勝とうとしてはなりません」(072頁)。他、「是れ一人(いちにん9の断制を以て天下を利する、之を譬うるに猶お一覕(いちべつ)(瞥)のごときなり)」(116頁)=2018/02/28
roughfractus02
6
内篇の形而上学には言語化不能な事柄を仄めかす放逸な逸話や大胆な比喩によって春秋戦国時代のコード化する権力に抗う力が漲っていた。外篇を弟子たちが引き継ぐ時、荘子自身の抗う力は弱まり、皮肉や洒脱を交えた思想的逸話に変容する。さらに雑篇では荘子の思想は世界となり、その中を彷徨う物語になるが、戦って勝利する物語にはならない。滑稽に描かれる孔子は荘子の世界を彷徨う主人公であり、彼は戦って勝つ物語が蔓延する時代に狩猟採集する人々の社会に放り込まれるかのようだ。孔子を恫喝する盗跖という男はまるで森の王である(盗跖篇)。2025/10/12
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