出版社内容情報
近代国家において愛国心はどのように発展したのか。共同体への愛着が排外的暴力とならないために何が必要か。著者の問題意識が凝縮した一冊。
内容説明
日本人の忠義は本質的に孤忠(忠義の独占)であり、戦前・戦時中の愛国心は、天皇への愛情と奉仕から成り立っていた。本書はこの愛国心が、頬かむりしたまま戦後も利用されていることへの危惧から執筆された。まず国民国家の成立までを概観し、狭義の愛国心=エスノセントリズム(自民族中心思想)が個人の確立と民主主義によって合理化されていく過程が示される。フランス革命当時、愛国者とは国を愛する者という意味ではなく、自由主義的精神の持主を指す言葉だったのだ。そして寛容と愛情―結合しがたいこのふたつのものを結びつけていくところに、愛国心の積極的な意味を見出す。
目次
1 問題としての愛国心
2 愛国心とは何か
3 愛国心の歴史
4 愛国心と民主主義
5 愛国心の呪詛
6 新しい展望
『愛国心』前後
愛国心について
著者等紹介
清水幾太郎[シミズイクタロウ]
1907‐88年。東京生れ。東京帝国大学文学部社会学科卒業。社会学者。ジャーナリスト、文学博士。讀賣新聞社論説委員、二十世紀研究所所長などを経て、学習院大学教授(1949‐69)、清水研究室主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さや
14
古い本であるが、論が明確で分かりやすく、この時代の捉え方を示す一端となる。2017/05/30
壱萬参仟縁
9
実に泥臭い話も書いてある。評者は、国家が先ではなく、地域が先ではないか、と思う人間なので、国家や中央集権が主導した結果、こんな八方ふさがりの格差社会になってしまったのだ。国家という枠組みの中に囲い込まれた国民の自由や権利が、改憲によって制限されることは見えている。国民主権というのは国家主権ということなのだろうか。国益の問題がTPPや川口議員の件で取沙汰されるが、国民の利益に照らしてどうなのか。日本人は日本国を愛すのか、自分たち自身を愛すのか、日本社会を愛すのか。根本的に問い直さなければ前進できない時代。2013/05/13
左手爆弾
4
愛国心という言葉につきまとう、扱いづらさをそのままに書いており、それは現代でも通用する内容である。愛国心は、偏狭な自国中心主義にもなりうるし、合理性と結びつけば国際主義とも協調可能でもある。こうした論考が1949年に出たことの衝撃は大きかったように思う。そして後書き等で触れられるように、やはりこの言葉を扱うのには何か恐れとか面倒くささを感じており、それが最後までなくならないのも興味深いと思う。今では、そういうある種の羞恥心を失ってこの言葉を使う人が多くなったものだから。2016/10/25
hwconsa1219
3
愛国心という、ちょっと扱うにはめんどくさい事象について、かなり詳細な分類と分析をされています。 民主主義による愛国心の合理化という、著者が目指した理想は確かに重要な視点と思います。他方で、それが非常に難しい目標であることも、昨今の政治状況を見るとわかりますね。2017/06/27
Daisuke Fukuzaki
0
書かれたのは1950年。古い本ではありますが訴えられている内容は現代においても通用します。愛国心とは何か、それを考えていくうえで重要な視点を与えてくれました。2013/06/05
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