内容説明
アジアの海に花開いた琉球王国。その全貌はいまなお数々の謎に包まれ、あたかも神話の世界のようなイメージを懐かせる。しかし歴史をひもといてみると、古琉球王国は、壮大な交易ルートを通じて築き上げた華やかな文化を誇っていた。中国、マラッカやポルトガル等、海外の文書に記された当時の王国の姿などを参考にしながら、その栄光と悲劇の歴史ドラマにわけいる。アメリカ統治時代を通じて否定的な意味合いを担わされてきた「琉球」という名称の本来の意味を復権させ、沖縄独自の文化と世界像に新たな光をあてた歴史的名著。
目次
プロローグ―マラッカにて
第1章 黎明期の王統
第2章 琉球王国への道
第3章 大交易時代
第4章 グスクの世界
第5章 尚真王の登場
第6章 琉球王国の確立
エピローグ―古琉球と現代
著者等紹介
高良倉吉[タカラクラヨシ]
1947年沖縄伊是名島生まれ。沖縄史料編集所、沖縄県立博物館、浦添市立図書館長を経て、琉球大学法文学部教授・文学博士。首里城復元の委員、NHK大河ドラマ『琉球の風』の監修者などもつとめた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
6
「伊波普猷(いはふゆう)は三山分立論にはじめて異を唱えた批判的研究者」(074頁)。三山進化論を提唱したのだった。海商にとって琉球は、朝貢貿易で中国産品が舶来する場で、東南アジアとの交易で南海産出至宝の集積地(129頁)。グスクの語源は、御宿(ごしく)、御塞(ごそこ)、グは石、スクは聖所など諸説あり(200頁)。民衆は「まひと」(真人)で、国家の統治機構下に置かれた(266頁)。戦時下も悲惨な目に遭い、また、現在も米軍軍縮には向かわず、むしろオスプレイが行動範囲を拡大させている。沖縄の平和はいつ訪れるか。2013/03/07
6ちゃん
4
旧石器時代から島津侵入まで、独自の文化を誇りアジア諸国と交流を続けた海洋国家としての琉球を分かりやすく解説した良書。著者の意図通り、歴史読み物として、ダイナミックに変化する琉球の姿が生き生きと見えてきた。特にアジア各地との貿易についてはその海洋ルートの広さに驚いた。一時期は東アジア交易の要になってたんだなぁ。 「テンペスト」から派生してこの本を読んだけど、思った通り歴史的事実は物語を超えるものを持ってたな。2012/05/19
二人娘の父
3
那覇からの帰路で、集中的に。学ぶことの多い著作だ。米軍統治下で意図的に使われた「琉球」の名称を、史料を辿り、本来の意味を復権させる、つまり現在につながる沖縄・琉球の歴史・文化の独自性に誇りと意義をもたせる著者の姿勢に胸を打たれる。阿麻和利に着せられた汚名を雪ぐ視点や、大東亜共栄圏構想に琉球王国時代の交易が利用されたなど、初めて知ったことも多い。琉球・沖縄を学ぶためには必読文献である。2024/06/11
雲をみるひと
3
沖縄の歴史に関する本。少ない関係資料、文献ながら王朝の歴史、中継貿易立国としての沖縄の活動の最盛期の記述を中心によくまとまっている。一方で往時の庶民生活等、資料の欠如で全く実態がわからないことも多数あることがよくわかった。沖縄戦の影響等もあり今後新たな資料が発掘される可能性は高くないだろうが、異文化が混ざった不思議さが沖縄の魅力の一つであることを考えるとそれはそれで構わないのだろうと思った。2018/10/25
rincororin09
2
「古琉球の研究は外国史の研究」という言葉が極めて印象的。 中世、近世の日本の多様性(例えば、「百姓」は水戸黄門に出てくるような農民ばかりではなかった…みたいな)といったことに関心があり「じゃあ沖縄は?」と思ってこの本を読んでみた次第。 冒頭のとおり、そもそも日本史という枠の中に入れて考えることはやめなければならない。 それにしても、応仁の乱だのなんだのってやってた頃に、東南アジアを自在に往来して敬意と一種の畏怖をもって迎えられていた古琉球の人々…っていうのがものすごく痛快。 2022/01/12