内容説明
地中海を望む古都アレクサンドリア。2300年の歴史を持つこの街には、地中海世界の栄枯盛衰の物語が刻み込まれている。アレクサンドロス大王の東征、クレオパトラの死、ナポレオン対ネルソンの海戦…。そして歴史の表舞台に幾度となく登場し、早くから国際都市として発展してきたこの地には、最先端の文化と技術が集まっていた。世界の七不思議に数えられるファロスの大灯台、70万冊の蔵書を誇った大図書館、ユークリッド幾何学、プトレマイオスの天動説…。この街の奥深い文化に魅せられた作家フォースターによるコンパクトで楽しい歴史案内。これ1冊で地中海史がわかる。
目次
第1章 ギリシャ・エジプト時代(陸と水;ファロス、ラコティス、カノポス ほか)
第2章 キリスト教時代(ローマの支配;キリスト教共同体 ほか)
第3章 哲学都市(ユダヤ人;新プラトン主義 ほか)
第4章 アラブ時代(アラブ人の町;トルコ人の町)
第5章 近代(ナポレオン;ムハンマド・アリー ほか)
著者等紹介
フォースター,E.M.[フォースター,E.M.][Forster,Edward Morgan]
1879‐1970年。イギリスの作家。19世紀ヴィクトリア朝的価値観に異を唱え、人生のあるべき姿、社会のあるべき姿を追求し続けた
中野康司[ナカノコウジ]
1946年神奈川県生まれ。東京外国語大学卒業。東京都立大学教授を経て青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピンガペンギン
21
「アレクサンドリア四重奏」を読む前に準備しておきたいと思い読んだ。前331年正月にアレクサンドロス大王が見た夢に詩人が現れてこの都市の建設を命じたという伝説があるという。クレオパトラが生きた地中海に面したコスモポリタンな都市というイメージがある。でも須賀敦子さんは行ってがっかりされたらしい。グノーシス主義はアレクサンドリアで始まったのか。 2024/04/19
ちあき
8
20世紀英国を代表する作家が書いたある北アフリカ都市の歴史。本文だけなら160ページにみたない小著だが味わい深い記述。前近代は文化史、近現代は政治史が読みごたえあった。映画『アレクサンドリア』に直接関連する記述は少ないけれども、歴史的背景を知るにはじゅうぶんである。哲学・思想にせよ文学作品にせよ、読書の幅を広げていくための手がかりも多数あり。映画で興味をもった人には文句なしで推奨できる。2011/03/27
壱萬参仟縁
7
『インドへの道』(1924年)で有名。1922年初出。歴史地図ではムーセイオン地区図書館は訪れてみたいが、多分行けないだろうな。この学園はプトレマイオス一世ソテルによって開設(041頁)。蔵書50万、目録120巻(042頁)。文学の特徴は、優雅、悲哀、学殖、滑稽、猥褻、に秀で、王家へ忠誠があればよかった(061頁)。紀元前250年に、エラトステネスの世界地図があるが、陸続きだったためか日本が無くて、極東がガンジス川というのが面白い。しかも東の端がセイロン島。そして、アレクサンドリアが経度0に(079頁)。2013/03/07
刳森伸一
4
アレクサンドリアの歴史に関するハンディな入門書。とはいえ、歴史家ではなく作家フォースターが書いているだけあって、文化的、宗教的な側面が主に描かれていている。読み物としても非常に面白い。2015/01/25
Mana
3
アレクサンドリアという都市の歴史とそこで花開いた文化についての簡潔な学術書。内容があっさりしているのである程度知っている点には物足りなさを感じるけど全体としては良かった。ただ本書の内容が全面的に信頼できるかは疑問。書かれた時代や著者の経歴などを考慮すると多少無意識のフィルターがかかっていた可能性はある。プトレマイオス朝について割いているページが多くクレオパトラについても語ってたけど最近読んだ彼女の伝記(ステイシー・シフ著)と大分捉え方が違っていて少し戸惑ったのもその一つ。他の本と読み合わせてみた方が良い。2012/02/13