出版社内容情報
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内容説明
病いへの深い洞察と患者への共感に満ちた珠玉のエッセイ集。新たな着想の展開を試みた「時間精神医学の試み」や「難症論」、平明な言葉で解き明かされる「統合失調症の病因研究に関する私見」や「サリヴァンの統合失調症論」、周到な観察が思わぬ姿を描き出す「霧の中の英国経験論」や「ハンガリーの旅」、近代史を卓抜な視点から瞥見した「引き返せない道」や「1990年の世界を考える」、災害と社会の相関を論じた「阪神大震災後四カ月」や「災害と危機介入」、そして著者の多彩な内面を物語る「現代ギリシャ詩人の肖像」や「詩の音読可能な翻訳について」など39編のエッセイを収める。
目次
時間精神医学の試み
共時性などのこと
精神医療改善の一計
サリヴァンの統合失調症論
隣の病い
基底欠損(英)basic fault(独)Grundst¨orung
ある臨床心理室の回顧から―故・細木照敏先生を偲びつつ
難症論
風景構成法(landscape montage technique)
フェレンツィの死と再生〔ほか〕
著者等紹介
中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年、奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。現在は神戸大学名誉教授。著書に『家族の深淵』(毎日出版文化賞、みすず書房)、訳書に『カヴァフィス全詩集』(読売文学賞、ギリシア国・文学翻訳協会賞、みすず書房)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
80
巻末の解説をよむと、この本は、同じ著者の「精神科医が物を書けば」の続編らしい。精神科医は、著者の実父斎藤茂吉も精神科医、その後も医者で文学者も多い、特に精神科医は多い。それだけ人間に興味や関心が多いのだろう。中井久夫、純然たる精神科医、特に神戸大学医学部でずっと精神科治療を続けてきただけに、もっと以前から知って起きたかった。最近である知ったのは。個人的に、私の娘も精神障害者で初期段階での主治医も神戸大学医学部でもう少しで学部長になりかけ、惜しくも光風病院へ転じた方である。神戸地区では抜群の大学、いい本2024/09/01
ネギっ子gen
50
【「日本人がダメなのは成功の時」危機感を置き去りにし、あるいは否認して、自己の地位と限界とを忘れ、おのれに酔って夜郎自大となる。逆に言えば、ダメだと思っているうちはまあまあ大丈夫ある】「統合失調症の病因研究に関する私見」「サリヴァンの統合失調症論」「霧の中の英国経験論」「1990年の世界を考える」「阪神大震災後四カ月」など、1986年から96年に執筆された39編の軟らかめのエッセイを収めたエッセイ集。<著作集やエッセイ集から洩れた、辞典項目や全集本の折り込みや雑誌の特集号や何やかや>の短文を収めた、と。⇒2024/05/29
i-miya
46
2013.09.10(つづき)中井久夫著。 2013.09.09 (サリヴァン、つづき) サリヴァンは、おのれの症例を語ることをやめた。 30年代のある時期からだ。 自己を美化しだしたことを自覚したからという理由。 1940年代、に入り全体主義と戦うアメリカ政府に協力、sらにヒロシマの衝撃により、病める世界の国際的緊張を治療しようとして、WHO、WFMHの設立に関与、道半ばで早くも失望し、幾分自殺を疑わせる急死をする。 2013/09/10
i-miya
42
2013.09.09(つづき)中井久夫著。 2013.09.09 (サリヴァン、つづき) ごく普通の言葉で語ることを常とした。 晩年、『精神医学的面接』は患者の対人困難を中心に洗い出す。 患者が不安を起こさない話題、話し方を心がけた。 音調、いいよどみ、脱落を重視する。 これに目ざとく(Alert)あるのが精神科面接の基礎。 急性精神病者をアルコールの酩酊状態において急場をしのぐことなどもしている。 水治療法=物理的療法にも関心をもった。 2013/09/09
i-miya
39
2013.09.04(つづき)中井久夫著。 2013.09.03 人間は、意識的には、さほど多くのことを思い浮かべておれないものだが、意識のすぐ下には実に多数のことが流れている。 いまあの人はどうしている、と思う人は、10人以上はいるはずだ。 その人の異変の知らせがあったときには、きっと私はその人のことを思っていたところだと思うだろう。 テレフエノメノン。 地球半回りするほど隔てた二地点、まったく別の二つの事象が同じ動きを示すことがある。 2013/09/04