内容説明
廣重徹の科学史研究には、科学思想の展開を科学の内側から捉えようとするものと、科学と社会との関わりを科学の外側から捉えようとするものとがある。前者は生前『物理学史』として世に問われ、後者は『科学の社会史』へと結実した。本書は著者の没後まとめられた論文集であり、観察対象を要素へと還元していく近代科学の方法論や、体制としての現代科学が形成されていく過程を明らかにすることで、〈内〉と〈外〉の両面から照らされた科学の深淵が簡潔かつ見事に浮かび上がっている。近現代の科学史入門として、また歴史的立場から現代科学の諸問題を剔抉してゆく「廣重科学史」の入門として最適の一冊。
目次
1 科学の歴史と現代(科学における近代と現代;問い直される科学の意味―体制化された科学とその変革)
2 科学の思想(19世紀の科学思想;20世紀の科学思想)
3 補(日本の大学の理学部―その科学社会史的側面)
著者等紹介
廣重徹[ヒロシゲテツ]
1928‐1975年。神戸市生まれ。京都大学理学部物理学科卒業。日本大学理工学部教授。理学博士。専門は物理学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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無重力蜜柑
8
巨人・廣重徹の論文集。19世紀から技術との結び付きを強めた科学が二度の大戦を通じて国家に内包され、その資本主義経済や軍備拡張を駆動する体制の一部になっているという有名な「科学の体制化」論。60年代の新左翼運動や反科学論とも連動した壮大な思想体系ながら、東大理物出身ゆえの緻密な科学理論把握に裏打ちされている。古き良き時代の科学史家だ。内的科学史と外的科学史を統合し理論の中に染み渡った体制の思想を抉ろうとする姿勢などは、SSKを先取りしてさえいる。早逝は日本の科学史にとって莫大な損失だったと思う。2022/07/14
Bevel
2
部分における有効性と部分の集まりにおける整合性が理論を正当化すること(全体は存在しないこと)。運動、もしくは質点において、説明をストップさせてもよいこと。科学は、合理性という名のもとで社会の中で蚕食されるものであって、合理性そのものではないこと。2013/08/03
たろやま
2
科学って自立も自律もしてなくて、「社会的制度」であって産業の思惑とともに発展してきたものだよねという話。それと、18世紀以降の科学の思想について、神様になりたーい→神様じゃねえ合理的な理由があるんだ→力学キター→どんどん細かくしたら本質わかるんじゃね?→いやもうそういう考え方じゃ限界だから、見方を相対的にしようぜ(相対性理論)→あふぅ因果律だけじゃ説明できないよぉ…(確率、統計学)←イマココ みたいな流れだということを解説してある。行き詰まった時代には示唆的な本だと思いました。2011/10/09
2n2n
1
I章、II章は退屈だったが、III章「 日本の大学の理学部」が、中々面白かった。科学と政治・産業界とは切っても切れない関係にあることを再認識。2012/07/30
ba_tabata
0
泣きながら本を読んだのは久しぶりだった。科学者はどこまで科学に対して無垢であって良いのかという問いに、無垢に信奉している科学が本当に無垢なものなのかを改めて問いとして立てるようになった。補論を読んで、この手の議論は何度も何度も現れるものだと改めて思う。2015/12/01
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