内容説明
ことわざの世界は深い。同工異曲の「ことわざ」は外国にも多いし、しかもそれらのほとんどが庶民の知恵、語り伝えられた生活の英知だ。生半可な思想なんかに負けないしぶとさと、一見矛盾することをも呑み込んでしまう柔軟さがある。少しばかり言いにくいことを伝えるときや決定に迷ったとき、わたしたちはことわざの力を借りるではないか。「急がばまわれ」「目くそ、鼻くそを笑う」「人の噂も七十五日」…、おなじみのことわざを挙げ、語句の選びかたや表現を分析し、同意味の英語の言い回しと比較し、ことばに浮き彫りにされる人間の普遍的なこころをさぐる。
目次
転石、苔を生ぜず
隣の花は赤い
夜目遠目傘の内
三尺下がって師の影を踏まず
急がばまわれ
船頭多くして船、山に登る
灯台もと暗し
娘は棚に上げ嫁は掃きだめからもらえ
鶏口となるも牛後となるなかれ
話半分腹八分〔ほか〕
著者等紹介
外山滋比古[トヤマシゲヒコ]
1923年生まれ。東京文理科大学英文科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学などで教鞭を執る。お茶の水女子大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、テクスト、レトリック、エディターシップ、思考、日本語論の分野で、独創的な仕事を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
14
「優れた作品は時の試練に耐える」とはよく言われること。ことわざは一種の作品であるからこれが当てはまる。この本は、脈々と受け継がれてきたそんな言葉の作品たちを紹介したものである。ことわざに関するエッセイ集といった感じか。「論理と言うからにはことわざの構造や成り立ちなんかを詳しく考察しているに違いない」と期待して読むと肩透かしを食らうものの、著者のことわざに対する独特な視点は興味深く、中々勉強になることも多かった。社会を鋭くコンパクトに表現し、語呂も良く覚え易いことわざ。短いからといって侮るべからずである。2014/03/29
torami
8
ことわざを軸に筆者の考えが述べられた随筆集。 面白く読みやすい語りと、独自の切り口が流石すぎる。2018/05/19
壱萬参仟縁
5
なぜ著者がロングセラーかというと、一文がきわめて短いことが大きい。そして、わかりやすい文章という意味では、著者の右に出る人はいないだろう。「三尺下がって師の影を踏まず」(039ページ~)とは、昼のラジオでモンスターペアレントをやっていたが、そんな先生への尊敬はどこかへ行ってしまったのか。「鶏口となるも牛後となるなかれ」(079ページ)は、『思考の整理学』のグライダー型と飛行機型だったか、と似ている気もする。知らない諺もあったので、使わないと忘れるというより、そもそも知らないのでは日本人失格。反省した次第。2012/11/30
snakedoctorK
4
外山先生のお話しはどれも面白い こういう方こそが教育者なのだろう 桃太郎の話の意味も興味深かった 2011/04/25
さくちゃん
3
作者が英語学科なだけあって日本や中国のことわざと英語圏のことわざを対比してあり面白かった。知らないことわざもあったため大変勉強になった。2024/07/09