内容説明
江戸の伊藤仁斎、荻生徂徠、明治の漱石、鴎外、露伴、昭和の荷風、芥川龍之介…、日本人は漢文を愛し、日々の覚えや自らの思いを漢文で記した。また、「論語」「五経」「史記」などの古典は必読の書でもあった。私たちの教養に深く入り込んでいた漢文を歴史的に説き起こし、その由来や美しさ、読む心得や特徴などをわかりやすく解説する。見慣れぬ漢字に臆せず、直感を養い、リズムを重視する―中国文学の碩学が、優れた例文を示し、漢文が本来的に持っている魅力を余すところなく語った最良の入門書。
目次
上篇(はじめに;漢文を読む心得のはじめ;漢文の訓読―日本語としての処置;中国の文章語としての性質 その一 簡潔;中国の文章語としての性質 その二 リズム)
下篇(「五経」の文章;古代の議論の文章―「孟子」を例として;古代の叙事の文章―「左伝」を例として;歴史書の文章;中世の美文;近世の議論の文章としての「古文」;近世の叙事の文章としての「古文」;白話文)
著者等紹介
吉川幸次郎[ヨシカワコウジロウ]
1904年、神戸市に生まれ、1980年、没。1923年京都帝大文学科に入学、支那文学を専攻。’28年中国に留学、’31年帰国。同年、京都大学人文科学研究所東方学研究部の研究員となり16年間をすごす。’47年京都大学教授。この間、数々の著書を発表、日本の中国文学の普及に大きく貢献、芸術院会員、文化功労者となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Hatann
12
日本の教養にも深く入り込んでいた漢文を、歴史的に説き起こす。漢文は五経が編纂されたころから、話し言葉から乖離した書き言葉であった。諸地域の方言の相違による意思疎通の困難さを克服し、漢文は中国はもとより朝鮮、日本でも共有された。簡潔とリズムを重視するが故に、日本では訓読法が開発され、漢文は共通言語として、様々な文化・技術を伝来させた。唐代から発展する白話文は現代中国語に連なるが、口語に接近するものであり、訓読法では読みがたい。中華圏の伝統文化を支えた漢文を教養とすることが、東洋の方法を可視化する手段となる。2023/10/22
Cinita
11
タイトルから軽めのエッセイかなあと思っていたら、ガチガチの漢文入門書(除漢詩)でした。漢文の基本的な特徴や日本での受容状況などをまとめた上巻と、様々な名著を引用しながら時代ごとの文体の変化を辿る下巻という隙のない構成。内容は濃いけどシャキッとした語り口が心地よくて読みやすかった。漢文ってかなりリズムを意識した言語なんだなあ……一度原語で味わってみたい。あと、江戸期の儒者や明治の文豪たちの漢文の腕前がネイティブに匹敵するレベルだったという記述が嬉しかったな。関連書を何冊か積んでいるので追って読んでいきたい。2025/09/24
そーうん
6
「はじめに」の一章に示される日本人と漢文の関係、既に圧巻。辞書を引かない方がよい、という助言が心に残った。2018/04/10
もち
6
とても為になった。1回生のときに読みたかった。2016/08/05
910
4
楽しめた自分に成長を感じる。言語学入門の講義で紹介された本。 漢文に触れるのは受験ぶりだった。読んだことのある文章・詩がいくつか入っていた。 知らない漢字がたくさん出てくると誰でも身構えちゃうよと思いつつ、知らない言葉を無視しながら読んだが、それでも面白かった。2017/06/30




