内容説明
レヴィ=ストロースが“発見”した親族の基本構造は、まさに現代数学の「群論」そのものであった。それは20世紀の構造主義が、ヨーロッパの正統の流れを、すなわち古代ギリシアにおける思弁と数学の幸福な結合を、現代に“再発見”したことを意味した。そこから見えてくるものは何か。プラトンのイデア数、ライプニッツの予定調和説、カントの認識論、ヘーゲルの解析学/歴史観、ニーチェやオルテガの遠近法主義、フッサールの現象学、さらに、中国周代の易に見る二進法、孟子における階級と関数概念など、精緻な数学的アプローチと該博な知見から生みだされた、ユニークな比較思想史的論考。
目次
1 構造の学とその応用(かたち、形式、構造;科学思想のキー・ワードとしての外延;人文科学における群論の使用)
2 数学と思想の構造的共通性(数学と哲学における生成の概念;歴史観の数学的モデル;遠近画法と遠近法主義 ほか)
3 数学的構造と社会イメージ(比の思想の社会的背景;比例の思想と階級の思想;関数概念の原初的形態 ほか)
著者等紹介
山下正男[ヤマシタマサオ]
1931年、京都市生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。同大学人文科学研究所教授を経て名誉教授。専攻課題は論理と数理の比較思想史的研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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中年サラリーマン
18
社会学と数学、宗教と数学、政治制度と数学、哲学と数学etc、世の中の様々なことと数学の関わりとは。それは「構造を持つ」ということ。本書は数式をほとんど使用せずに説明を行っている。僕的にはもう少し数式が欲しいところであるが、逆に数学が苦手な方は本書を読むことで数学の懐の深さがわかるのではないか!個人的には最初の方の外延化、内包の説明からの内包⇒外化変換の話が面白かった。2014/05/03
∃.狂茶党
10
1969年から、1980年まで、二つの数学雑誌に発表されたエッセイをまとめたもの。 それぞれ独立しており、どこから読んでも成立する。 後書きによれば、60年代〜70年代の政治の季節を、肌で感じつつ構造主義に抗する、思惑があったらしい。 文系、人文系に向けて書かれたもので、数式が苦手でも読めるし、ある程度理解できる。 (わたしはこの手の数学本が向いているようだ) 数の成り立ちから、数学の歴史を駆け足で辿っていくとともに、哲学、思想についても考えていく。 数学は面白いと思わせる。2023/01/01
Akiro OUED
4
「原子論は、個人の析出していない非個人的社会では生まれない」ので、「中国の歴史にて原子論は生まれ得なかった」と。ん?中国の八卦に群論的構造の伏在を論じている。原子論を集合論の哲学的基礎として位置づけている以上、中華思想に原子論的傾向がないとは言い切れんだろ。読む価値なし。2023/08/21
monado
2
数学的構造というよりは、そのアナロジーというややふんわりした感じであるが、非常に刺激的を受けた。後半に行くに従って、こじつけ度が高くなっているような印象を受けるものの、披瀝されるネタはどれも面白い。2024/10/13
onisjim
2
本当にひさしぶりに買って読んで損したと思う本に出会った。僕が数学ができないからというだけではなくて。いちいちあげつらっていられないくらいにその論考は牽強付会にすぎる。特に宗教的回心について述べている部分は噴飯もの。そして著者が自分の知識を自慢するばかりで、楽しい部分がまるでない。レヴィ・ストロースやピアジェも数学的には不十分だね、でばっさり。ベルグソンにいたってはたった一言「ごまめの歯ぎしり」。唯一「ドイツの代数学的用語は社会学的な用語から借用された」という指摘だけが興味を引いた。2012/01/15
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