内容説明
柳田民俗学を本質的に「士大夫」の民俗学であると断じた著者は、「非常民」こそが人間であることを宣言して、柳田の「常民」概念が掬いとりそこなった人間生活にとって最も重要な性の現実にとことん分け入って行く。外部からのフィールド調査ではけっして辿りつけない村落共同体の公事としての性風俗を、「コドモ集団」の性教育から「オナゴ連中」の構造と機能にいたるまで、詳細かつ大らかに語りきった赤松民俗学の集大成。
目次
1 生活民俗と差別昔話(もぐらの嫁さがし;村落共同体と性的規範)
2 非常民の民俗文化(村落共同体とは;間引き風俗;初潮の民俗;ムラと子供;誕生の祝い・子供のシツケ;子供仲間 ほか)
著者等紹介
赤松啓介[アカマツケイスケ]
1909年兵庫県生まれ。2000年逝去。専攻:民俗学、考古学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cozy
4
面白かった。夜這いというと、男が欲望の赴くまま、女性の自宅に忍び込み襲うという、女性を蹂躙しているイメージだけど、かつて昔の村で文化として存在していた夜這いはとても秩序があり、女性の方にしても普通のこととして受け入れている時代があったことに驚きを感じた。今の日本文化、特に性文化は西洋の影響を受けオープンな性は粛清されていったのだな、と感じた。昔の方がよかったとは言わない。だけどもう語れる人がほとんどいなくなってしまった文化について書かれたこの本はとても貴重だと思う。2018/03/16
塩崎ツトム
4
柳田國男の本流民俗学が無視した日本社会のセクシャルな部分を著者の体験混じり(!)に描写する日本エロ近代史。「美しい国」も一皮むけば吐き気を催すようなスペルマの臭いが……。2013/11/06
屋根裏部屋のふくろう🦉
2
『夜這いの民俗学』と重なる部分がたくさんある。ここではとりわけ下層生活者や都市部ドヤ街、商売人の夜這いなど、細かな部分にまで焦光を当てている。「おいおいそんなに簡単に夜這いが成立するものか?」とも思う。また、さらに踏み込んでドヤ街の生活や独自の金銭感覚(借金の返済は女房の肉体で勘定相殺)、堅気の人妻や娘を独自のワザでたらしこみドヤ街の部屋で集団で辱める事例まで書かれている。柳田民俗学を批判し、返す刀で明治維新以降の政策を切るなど赤松節が冴える。夜這いの「柿の木問答」は一種の行事進行潤滑油みたいなものか。2018/02/09
Yukiko
2
前半の村の部分がとくに面白かった。ミッシングリングがつながったような気持ちがする。大正から昭和の初めに都市中間層が成立したのだけれど、その性規範が生まれる以前の日本の庶民の性について、なるほどとおもいながら、読んだ。後半の都市の部分は、ちょっと分からない部分がある。2012/02/19
じゅんた
2
柳田派民俗学を真っ向から批判したもの。本書は著者がまさに生きていた、低階層の人々の「生臭い」生活(主として性生活)の記録である。本書中盤までに見られる、同じ論述の反復には辟易するし、最終節の「母系社会」と「共同経済社会」はあまりにもぶっ飛んでいてついていけないが、美化されていないナマの日本を知りたければ一読の価値有り。2011/08/22