内容説明
構想の雄渾、趣向の巧緻、文体の華麗、人物造型の玄妙、考証の厳密、エピソードの耽美・古怪。この長大な物語には欠けるものがない。豊富に付された口絵や挿絵もまた、本文と同等の工夫をもって配されているから、画文渾然、伏線は錯綜し、仕掛けは曲折して、作品全体がいわば一個の巨大な図解宇宙誌の観を呈する。謎は多く、秘密は深い。読者に最高度の学識と想像力を要求するこの種の作品を堪能するには、手練の周到な読みを俟つにしくはない。稀有の伝奇ロマンの魅力を、徹底的な細部へのこだわりと構想全体への目配りをもって論じ尽くす、著者積年の研究の集大成。図版多数。
目次
謎とき『八犬伝』口上
第１章 伏姫曼荼羅
第２章 八大童子の幻影
第３章 唐獅子牡丹の系譜
第４章 漂泊の七人
第５章 悪女と怪物
第６章 母子神の物語―『八犬伝』第三部
第７章 曲亭馬琴 最後の戦い
第８章 星の秘儀空間
回外冗筆―「あとがき」を兼ねて
著者等紹介
高田衛［タカダマモル］
１９３０年、富山県生まれ。早稲田大学大学院修士課程、東京都立大学大学院博士課程修了。東京都立大学名誉教授。近畿大学文芸学部教授を務めた。専攻、日本近世文学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
活字の旅遊人
43
スーパーファンタジー『南総里見八犬伝』の解説本。口語訳を読みながら感じていた、『水滸伝』を始めとする中国古典からの影響も含め、幅広く深い考察に感心しきりだった。文学研究かくあるべし！ 挿絵込みで読まないと面白み半減ですね。長すぎるきらいはありますが、「八犬伝」はもっともっと読まれるべきではないかと思います。そして著作権云々は大事だけれど、過去の作品から影響を受けずに創作をするというのは、厳密にはあり得ないということを実感させられます。「八犬伝」については、この先も関心を持たざるを得なくなりました。2022/01/22
不識庵
13
曲亭馬琴は物語を書くだけではなく、挿し絵の指示もしたという。様式を重視する作品であり、超長編伝奇読本と呼ばれる。江戸時代に著された室町時代の物語である。劇中鉄砲が登場する。室町に鉄砲はなかったのだが。挿し絵の八犬士や女性も江戸時代の風俗である。馬琴にしてこの姿勢であるからには、細かいことはいいのである。ある意味素材として活用するくらいの姿勢もあっていいだろう。私的な好みの呼び方をすると、これは長編大活劇である。指輪物語が大作映画になったように、南総里見八犬伝も多局展開していい。面白い物語の復活を望む。2018/10/31
ユラニト
7
私の読んだ児童書版では端折られたストーリーがあるため補完のために読んだ。馬琴の成り立ちや作家としてのこだわり、書かれた当時の時代背景、八犬伝を作るにあたって参照された物語、細かく解説してくれているので求めた以上の内容だった。しかし私にはだいぶん難しく読むのに大変時間がかかったし、おそらく概要しか理解できなかったことが残念。でも今理解できなかったことが後になって別の資料や作品を読んだときにわかることもあるので読みきれてよかったな。私の好きな船虫の死に方が原作ではなかなか悲惨なようでちょっと寂しい！2022/11/27
真塚なつき（マンガ以外）
5
「ここの典拠はアレ」「この対応が云々を意味し」って要は今じゃお馴染みの解読本なのだが、そもそも馬琴がそのように作り上げ、わざわざ読者を挑発し駆り立てているのが『八犬伝』なのだということ。著者の言を借りればそれは当時の想定読者の共通了解だったろう知識を洗い出すことで、〈いま〉いかに読み得るかではなく、そもそも〈そのとき〉どう読まれるべく書かれたか、を追っているに過ぎない。図書館で読み、手元に置きたいと思ったが、品切れとは……。しかし話には聞いていたが草双紙・読本って中身から業界までほんとラノベみたいなのな。2012/11/14
しんかい３２
3
八犬伝を紹介しつつ、著者独自の見解（八大童子説）をも論述している。分厚く内容も濃いのでちょっとしんどいが、語り口の軽妙さもあって楽しんで読めた2011/09/18
