内容説明
「ゲーテは植物が異常を現わすとき、そこに“原植物の理念”を見つけ出す最上の手がかりを見ています。…霊的な生きものである人間の場合にも、基本的には同じことが言えるのです。人体に潜んでいる異常性は、人間本来の霊性を外に開示してくれるのです」。この直観を宇宙大に拡張し、人類を巨大な障害児と見れば、“原人間の理念”探究に捧げられた人智学の使命が理解できよう。本書は医療と教育の現場に向けて語られた唯一の治療教育本質論であるとともに、シュタイナー思想の極北でもある。貴重な証言「人智学的治療教育の成立」(A.シュトローシャイン)を併載。改訳決定版。
目次
治療教育の基本的観点
本来の魂のいとなみ
精神遅滞とてんかん
ヒステリーの本質
硫黄過多の子と硫黄不足の子
治療教育の実際
まとめの話
付録 人智学的治療教育の成立
著者等紹介
シュタイナー,ルドルフ[シュタイナー,ルドルフ][Steiner,Rudolf]
1861‐1925。オーストリア=ハンガリー帝国の辺境クラリエヴェク生まれ。自らの思想を人智学(アントロポゾフィー)として樹立。1914年以降、バーゼルの近郊ドルナハにゲーテアヌムを建設。ここを科学、芸術、教育、医療、農業の分野にいたる人智学運動の拠点とする
高橋巌[タカハシイワオ]
東京生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程修了。1973年まで同大学文学部哲学科、美学・美術史教授。日本人智学協会代表
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
7
1924年初出。「精神疾患は最高の叡智の歪んだ模像」(047ページ)。叡智ということは創造性がありそうなので、最初から患者扱いとかではなく、いいアイディア(独創性)も垣間見える部分もあるので、傾聴してメモをとり、患者のよいところを伸ばしていく治療法はないものかと素人ながら思っている。薬に過剰依存しても展望はないだろう。家庭教師として11歳半の障がい児を担当したことがある著者(126ページ)。評者も、障がいを負う生徒の方が、結果は出にくいが、その結果に屈することなく、学び続ける謙虚さがあると評価している。2013/02/20
ヴェルナーの日記
3
シュタイナーの治療教育(特に障害を持った児童)に関するとても強い関心と治療に対する意欲が感じられた一冊。 医療内容が現在に通ずるか否かは別にして、障害を持った子供たちに寄り添うにして治療教育を進めていこうとする真摯な態度に感動した。そして障害を持った子供を特別視することなく、大きな可能性を秘めた人材と定義し直すといった画期的な思想に目から鱗が落ちる思いがした刺激的な名著である。2013/03/18
iwri
1
再読。本書は講義録の中でも難解な部類に入る。この講義では理論面としての人間学と実例を通して治療教育が語られている。シュタイナーはヴァルドルフ学校創設の際、教師たちに『一般人間学』の講義を行い、また、よく知られているように、シュタイナー自身の教育実践が水頭症の子どもの治療教育から始まったことを併せて考えれば、本書で述べられているのはシュタイナー教育(学)の本質であるとも言えるだろう。同時にそれは、思考・感情・意志の調和的発達という、人智学の重要なテーマでもあり、人智学的にも重要な講義だと言えるだろう。2011/04/25
みかん
0
特別支援に関わる方に。2017/11/26