内容説明
絵画は美しいのみならず、描かれた時代の思想・宗教観を密かに映し出している。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、デューラーの『メレンコリア』、ジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』。世界の名画のなかでもとくに謎に満ちたこれらの作品から、絵画の隠された謎をさぐる。画家が本当に描きたかったのは何か、何に託してその意図を伝えたか?美術研究の成果を存分に駆使しながら、絵画に描かれた思想や意味を鮮やかに読み解くスリリングで楽しい美術史入門。
目次
第1日 ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画について
第2日 レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』について
第3日 デューラーの『メレンコリア1』について
最終日 ジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』あるいは“絵画の謎”について
著者等紹介
若桑みどり[ワカクワミドリ]
1935年、東京生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科専攻科修了。イタリア政府給付留学生としてローマに留学。千葉大学名誉教授。川村学園女子大学人間文化学部生活文化学科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
248
本書はイコノロジー(図像解釈学)の入門書。もっとも、入門書とはいっても、従来の解釈にとどまらず、最新の学説や見方も紹介しており、奥行きもある。また、ここからさらに学びたい人のためには、巻末に参考書も用意されている。対象とされたのは、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、ジョルジョーネの4人の代表的な名画。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の「ノアの方舟」の解釈にも驚くが、白眉は「神なき宇宙」を見ていたというダ・ヴィンチ論。絵画の解釈にとどまらず、「ルネッサンスとは何であったのか」に見事に答えるもの。2012/07/25
buchipanda3
98
前に読んだミステリで図像解釈学に興味が湧いたのでこちらを読んでみたが、面白かった。本書では図像解釈学の他に様式論、図像学と組み合わせて名画の主題や作者の意図が体系的に解説されている。元々、大学での講義録なので読み易いし、中身も充実。これら美術史の学問で興味深いのは、歴史や神話、宗教、社会学だけでなく心理学や哲学なども含めて包括的なものだということ。まさに人間を追求している。実際、今作では絵の主題と共にミケランジェロ、ダヴィンチ、デューラーなどの人物が見えてくる。もっと彼らのことを知りたくなった。2020/05/11
アナーキー靴下
60
色々絵を見るうち、絵を見るとき目の前の絵だけを見ているわけではないんだ、と思い始め、そのような本かと思い読む。が、内容はイコノロジー入門らしく、浅学な私が勝手に期待していたものとは少し違った。鑑賞ではなく解釈、絵画から歴史を紐解き更に解釈の深度を増すことを目的としたような学問だろうか。しかし中世の宗教画が「貧者の聖書」と呼ばれていたとか、絵は思想の表現で闘争的であったなどと言われると、現代だとその役割は、広告業界に受け継がれてしまっているんだろうか、と…。そう考えるとどうしようもなく拝金主義な世の中だ。2023/10/25
りー
27
イメージ、といってもルネサンスの絵画数点。絵画を見るには、歴史や描かれた当時の社会常識、書き手の人間性、そして「寓意」に着目すべき、という内容。うーん、でもねぇ…理屈で絵を見るのって、苦しくないですか?。知りたいと思って色々勉強した後、その知識が邪魔をして絵そのものをじっくり見られなくなってしまわないかしら?まずは、知識を横にどっこいしょ、と避けておいて、作品から漂ってくるものに身を任せて浸り、それから思考しだすくらいで良いと思うのですが。2023/07/29
A.T
25
ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、ジョルジョーネというルネサンス期の有名な代表作を解説。ドイツのデューラーは版画のみ。思想的な表現を複製して配るためにそうしていたという行動的なアーティスト像に打たれました。ここに紹介されてる4人は皆、それまでのカソリック教会の世界観に物足らなさを感じてきた天才たちなんですね。デューラーの代表作「メランコリア1」のポーズは19世紀の天才ロダン「考える人」と同じというのもすごいね。2018/02/03