内容説明
異色・異能の建築学者にして風俗研究家、今和次郎。東京美術学校図案科を卒業した後、柳田国男らとともに農村・民家の調査を行い、関東大震災後は「バラック装飾社」の活動や「考現学」の提唱で知られるようになる。人々の活動のさまざまな側面をただひたすら観察し、数量化し、記録する、その研究領域は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだが、既存の「学問」とはあまりにも手法が異なるため、体系や方法論を欠いているとして、非難を浴びることもあった。一体、今和次郎とは何者か。「考現学」とはどんな「学」なのか。自らが拓いた「考現学」に込めた、暖かく深い眼差し、鋭敏な触覚が、今との交流の深かった川添登の筆で鮮やかに甦る。決定版評伝。
目次
1 考現学の誕生
2 都市と農村と
3 田園の考現学
4 考現学の方法
5 考現学派とその後
補論1 考現学の再構築―銀座調査を中心として
補論2 考現学―場所(トポス)の実証的研究
補論3 考現学modernologio
著者等紹介
川添登[カワゾエノボル]
1926年東京都生まれ。早稲田大学文学部哲学科をへて同大学理工学部建築学科卒業。建築評論家。現在、(株)シィー・ディー・アイ所長。未来学、生活学会等、多様な活動を展開。民間学である生活学を体系化したことで97年、南方熊楠賞を受賞。著書に『民と神の住まい』(毎日出版文化賞)、『生活学の提唱』(今和次郎賞)など
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感想・レビュー
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ジャズクラ本
7
○平凡社STANDARD BOOKS今和次郎の紹介本だけあって考現学に至るまでの過程が体系的に記されており、今和次郎及び考現学を知るのに大変役立った。著者が建築学者であるためか今が建築から考現学の端緒につくあたりの記述は多少煩瑣。/今和次郎 吉田謙吉「モデルノロヂオ」/日本原住民コロボックル説は人類学者 坪井正五郎/柳田は民間伝承論を1 生活外形、2 生活解説、3 生活意識に分類したうえで第3の生活意識の研究が最も重要としている/今は晩年工学院大学で教鞭をとっていた為、同図書館に膨大な資料が保管されている2020/01/04
いちはじめ
3
考現学の提唱者、今和次郎の業績を知る手ごろな一冊。ただ、藤森照信に対する名指しの批判がかなり感情的なのはいただけない。2004/05/24
ぼっせぃー
0
今が民俗学者の弟子で、建築家の師匠で、考現学の提唱者でもある理由がうまく繋がらず、半年近くかかずらっているテーマだったがようやくスッキリしてきた。柳田と今の関係は藤森照信の著作からも読み取れたが、今が舞台芸術に携わった際に、生活の様相の消滅の速さに気づき、人間の個性や動きをも反映する生活空間を意識するようになり、そこで行われる「建築外の建築」を志向するようになったという指摘が、吉阪と今の関係の重要な補助線となった。さらに移り変わりの早い都市を記録するためスケッチから統計へ方法が変更したという指摘も面白い。2022/09/03