内容説明
古来、西欧においても、また日本でも、怪異・幻想文学は「文学」の正道として認められてこなかった。しかし、そこには生の限界状況のなか、さまざまに苦悩する人たちの魂の叫びがあり、それぞれの民族の本質的性格さえ表れているのである。本書に収録されている秋成、南北、黙阿弥、鏡花などの世界から、西欧近代の神秘家フランシス・グリーアスン、詩人エイ・イーなどを論じた壮大な東西のデモノロジー、オカルティズム、ウィッチクラフト、ミステシズムの諸考察は、言葉の錬金道士日夏耿之介の独壇場であり、今にいたるも他の追随を許さない。「サバト世界」文庫オリジナルである。
目次
1 恠異・古譚(恠異ぶくろ;徳川恠異談の系譜;怪談牡丹灯の源流 ほか)
2 楚囚文学・焚書(楚囚文学考;獄中文学考;焚書史話 ほか)
3 神秘(全神秘思想の鳥瞰景;フランシス・グリーアスン;近代神秘詩と詩人エイ・イーの位相)
著者等紹介
日夏耿之介[ヒナツコウノスケ]
1890‐1971年。早稲田大学英文学博士。学匠詩人として、『転身の頌』『黒衣聖母』『海表集』『美の司祭』『明治大正詩史』など、詩集や研究書、評論や随筆を発表し、荘重幽玄な美意識を確立
井村君江[イムラキミエ]
1932年生まれ。東京大学大学院比較文学博士課程修了。イギリス・アイルランド・フォークロア学会終身会員
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
26
題名のように黒魔術の儀式でもあるサバトではなく、文学には位置づけられない怪談、幻想文学に焦点を当てた書評集。ただし、泉鏡花の『眉かくしの幽霊』の評で「せっかく、音のない世界を織り成しているのに幽霊からの『似合いますか』の言葉で興ざめしている」という記述には疑問です。私はあの場面は三島由紀夫が絶品の怪談として絶賛した『遠野物語』22での佐々木氏の死んだ曾祖母が帰ってきた時の裾に炭が当たってくるくる、廻ったことで怪異が現実に現れた不思議と恐ろしさを示すというのと同じ効果を発揮していると思います。2013/08/24
生きることが苦手なフレンズ
1
古今東西の怪異小説、神秘思想を博覧強記の著者が紹介するもの。これ自体古典と化しているから、読み、考察の鋭さみたいなのは今では感じられない。選民意識も鼻につく。だから、大正・昭和初期のインテリっぽい雰囲気が味わいたいならいいと思う(新漢字に直されてるけど、ケンブリッジだとか、わざわざ漢字であててたりするよ)。でも、僕、今日はそういう気分じゃなかった。2014/02/03
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