内容説明
電子メディアの登場は言葉の世界をどのように変貌させようとしているのか。ワープロやパソコンで入力された文章と肉筆で書かれた文章とのあいだに差異は存在しないのか。書き言葉と話し言葉を分ける最後の一線に踏み込み、“筆蝕”という独創的な概念を駆使して、書くことの本質にはじめて照明をあてた画期的な論考。
目次
序 書くという行為の坩堝へ
1 書くことと話すこと
2 筆蝕
3 “筆蝕”と文学
4 スタイル
付録 書くことの深み―筆蝕の構造
著者等紹介
石川九楊[イシカワキュウヨウ]
1945年、福井県生まれ。京都大学法学部卒業。書家。京都精華大学教授、文字文明研究所所長。著書に『書の終焉―近代書史論』(サントリー学芸賞)、『日本書史』(毎日出版文化賞)などがある
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感想・レビュー
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一穂青燈
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何度も中断し、ようやく読了した難解な一冊。全く馴染みのない概念が多いばかりか、多様な文献を引く割に論拠のない決めつけも多く「私は~と考える」を補いつつ読まねばならないためです。一般的な文章を書くことでなく、書家の立場から見た「かく」を知れる点ではめずらしい一冊ではあります。私たちは紙にではなく世界総体に書いている、など印象深い表現がある一方で、「かく」は「欠く」であり「掻く」である、パソコンは「話し言葉」を記す「おしゃべり機械だ」、などそのまま飲み込むのが難しい内容も多いです。書家の見地は難しいようです。2019/08/20