内容説明
ファシズムの暗雲に覆われた1930年代のスペイン、これに抵抗した労働者の自発的な革命として市民戦争は始まった。その報道記事を書くためにバルセロナにやってきたオーウェルは、燃えさかる革命的状況に魅せられ、共和国政府軍兵士として銃を取り最前線へ赴く。人間の生命と理想を悲劇的に蕩尽してしまう戦争という日常―残酷、欠乏、虚偽。しかし、それでも捨て切れぬ人間への希望を、自らの体験をとおして、作家の透徹な視線が描ききる。二十世紀という時代のなかで人間の現実を見つめた傑作ノンフィクション。共和国政府の敗北という形で戦争が終結した後に書かれた回想録「スペイン戦争を振り返って」を併録。
目次
カタロニア讃歌
スペイン戦争を振り返って
著者等紹介
オーウェル,ジョージ[オーウェル,ジョージ][Orwell,George]
1903‐50年。下級官吏の子としてインドに生まれ、奨学金でイギリスの名門イートン校を卒業。大学に進まず、ビルマで警察官となる。5年後に辞職、パリで貧乏生活を体験したのちイギリスに帰り、ルポルタージュや小説を発表。スペイン内戦では義勇軍に参加した
橋口稔[ハシグチミノル]
1930年生まれ。専攻は英文学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
56
「行動する作家」オーウェルの面目躍如。彼が「動物農場」や「1984年」でスターリニズムをあれだけ痛烈に揶揄する原体験がここにあったのだと理解できた。複雑な国際情勢が絡み合ったスペイン戦争。ファシズムと戦うはずが、なぜか次第にコミュニストが不気味な対抗勢力として浮かび上がり、泥沼の抗争に巻き込まれていく。数奇な出来事の連続はまるで映画。最低限の人間らしい生活を求める労働者たちへの惜しみない共感、一方で安全地帯から好き勝手に批評するインテリたちへの反感。「ぶれない男」はどこまでも強くカッコイイ。2020/08/25
kazi
19
1984年で有名なジョージ・オーウェル氏によるスペイン内戦従軍ルポタージュ。オーウェル氏は当時の複雑極まりない政治情勢を筆を砕いてなんとか説明しようとしているのだが、複雑怪奇すぎて説明されれば説明されるほど意味わからんくなってくるという恐ろしい状況に見える。個人的な戦闘体験の臨場感はさすが。ここの描写にオーウェル氏の人間主義者としての温かな面が窺えてなんだか泣けてくる。絶望的な状況にあってもこの人は人間性というものに一定の信頼を置いていたのだなと。2024/03/08
イシザル
11
アナーキーで陽気なイタリア人の義勇軍の部隊が、大砲を積んだ汽車に一杯に乗って前線に向かう描写は、脳内に紅の豚の加藤登紀子の名曲シーンしか流れない。2021/02/03
ネコ虎
9
スペイン内乱の政治情勢がもう一つピンとこないので、オーウェルの行動の切実さがわからない。フランコ軍と戦うために義勇軍に参加したのだが、語られるのはコミンテルン支配下の共産党の愚劣さ。そして戦場での細々(こまごま)としたこと。死の恐怖が身近にありながら淡々と戦場の死が語られるのは、時代かオーウェル自身の資質からか。首に銃創を受けても、その後もカタロニアにとどまり続けさせるものは何か。しかしスペイン共産党の、フランコ軍より内部のアナーキストを徹底排除するという狂気は今の民進党の内部敵対の凄まじさを思わせる。2017/10/25
プエブロ
3
ファシストとスターリニストの狭間で苦闘するオーウェルに涙。スペイン内戦の入門書としてベスト、繰り返し読みたい本でもあります2010/09/12
-
- 洋書
- TINTORET