内容説明
神はどのようにして発見され、語られ、利用されてきたのか。古今東西の文学・思想の森に分け入って、その本質的要素を抽出した高橋神話論の集成。第2巻は、不可測の「原初」を模倣・継承し、反復し、再現することによって成り立つ神話的な「生」(ビオス)を探り、すべて茫々、さだかではない不可思議な謎、始原を解き明かす。また、連続と非連続、生と死、循環と行き止まり、謎と解決など、構造的なモティーフから生じる迷路や迷宮の出現を考察し、重なりつつ背きあう人間の心の中の迷宮をも読む。さらに、不可視の奥から突如あらわれる神と、その在り処が不明になった神の消失点を見届ける。全2巻完結。
目次
1 引用と再現(引用と再現;引用について―他者の受容 ほか)
2 始原と記憶(神話的想像力―名前と数字について;聖なる複数の世界 ほか)
3 迷宮・闇・禁忌(幽顕の境―あそび・まじめ・めまい;見えない迷宮 ほか)
4 神―顕現と変相(道化と戦慄;道化と神 ほか)
著者等紹介
高橋英夫[タカハシヒデオ]
1930年東京生まれ。東京大学文学部独文科卒業。文芸評論家。主要著書に、『批評の精神』(中央公論社、亀井勝一郎賞受賞)、『役割としての神』(新潮社、芸術選奨受賞)ほか
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感想・レビュー
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うえ
6
これは良書。特に「「もの」と「あはれ」と―本居宣長から折口信夫へ」、「引用化としての小林秀雄」、「引用論者ベンヤミンへの覚書」が秀逸。「折口信夫が宣長に要求したかったことは、「もの」のデモーニッシュな本性こそ「あはれ」なのだ、という洞見であっただろうか」「小林秀雄の仕事は、引用という面から見たときにも類を超えて刺戟的であり、しばしば危機的ですらある」「ベンヤミンは未完の思想家である。生涯は政治の影に追われて自死で終ったし『パサージュ論』も…未完を内臓した方法論そのままに、未完の書となった」2016/03/06
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- 理系。 文春文庫