内容説明
人類にとって宗教的現象とはいったい何か、人類史という壮大なスケールのなかでその展望を企てた本書は、20世紀を代表する宗教学者・エリアーデが最晩年に遺した畢生のライフワークである。この古今未曾有の偉大な業績は、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教といった個々の宗教の理解を助けるばかりでなく、人類が創造した宗教そのものの姿を見事に描きだしている。文庫版第2巻は、ヴェーダの神々、ギリシア宗教、オリュンポスの神々と英雄たち、ザラスシュトラ、イスラエルの宗教、ディオニュソスの密儀までを収める。
目次
第8章 インド・ヨーロッパ諸民族の宗教 ヴェーダの神々
第9章 ゴータマ・ブッダ以前のインド―宇宙的供犠からアートマン・ブラフマンの至上の同一性まで
第10章 ゼウスとギリシア宗教
第11章 オリュンポスの神々と英雄たち
第12章 エレウシスの密儀
第13章 ザラスシュトラとイラン宗教
第14章 王と預言者の時代のイスラエル宗教
第15章 ディオニュソス、あるいは再び見いだされし至福
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
インド・ヨーロッパ諸族を軸にギリシャ宗教やイスラエルの宗教などを詳細に語っていました。儀礼の中に自由を折り込みながら成り立っていく思想は、後の様々な宗教へと発展していったのでしょうね。2022/12/08
塩崎ツトム
15
古代インド信仰のヴェーダからペルシャのゾロアスター教へ。古代ユダヤ教の堕落からバビロン捕囚へ。ギリシャの神々と、現代は失われたエレウシスの密儀、ディオニュソス信仰の時代。2024/07/28
みのくま
9
本巻も広範に宗教史を概観しているが中でも「エレウシスの密儀」と「ディオニュソス」の章が面白かった。どちらも古代ギリシアの密儀に関係する信仰について扱っている。前者はペルセポネ強奪からの四季の始まり神話についての信仰であり後者はディオニュソスの猟奇的な神話への信仰である。どちらも密儀に関わる信仰だけあって生死や性、また獣性を解放するような狂気が介在する。まるで文明の発達に抗うような野蛮さを感じる。特にディオニュソス信仰は謎が多く外来神であり女性信者の異常行動が凄まじいと共にオルペウス信仰との類似性も気になる2025/01/01
roughfractus02
6
前巻ではセム語族の一神教の始まりを素描し、本巻では多様なインド・ヨーロッパ語族の言語の共通性から忘我の儀礼に自然の円環を人間の生が辿り、始原へ回帰を描く農耕社会的な時空を見る。その多神教システムは広大な宇宙論をヴェーダに集約し、ブラマーナやウパニシャッドに伝わる。一方、遊牧的なゾロアスター教は一直線に終末へと向かう時空を作り、その宇宙観は同じ遊牧社会のセム語族の一神教に取り入れられる。都市の政治構造を反映するギリシャ宗教で異質なディオニュソスには、都市に抑圧されたエレウシスの農耕的密儀が形象されている。2021/07/01
Copper Kettle
3
この巻で最初に論じられる「インド・ヨーロッパ諸民族の宗教」と「ゴータマ・ブッダ以前のインド」の2章は読むのに苦労した。その後に出てくるギリシアのオリュンポス山の神々やイランのザラスシュトラについてはすべてを完全に理解したわけではないけれど、少なくとも読みやすかったので、やっぱり一定の予備知識は必要なのかもしれない。それでも私自身、世界の宗教に詳しいわけではないので、新しい発見があり興味は尽きない。有名らしいけどエレウシスの密儀というのも恥ずかしながら初めて知り、そちらも詳しく知りたくなる。キリがないね。2022/12/04