出版社内容情報
物語は、昔なじみの場所。そしてそこでは変わりゆく自分にも出会えるのだ。思索と現実、日常に共にある、本と物語をめぐるエッセイ。
内容説明
変わりゆく自分と、物語を発見する日常を辿るエッセイ。
目次
1(伝えたい一冊;今週の本棚 ほか)
2(小さな人たちのいる場所―映画「借りぐらしのアリエッティ」;「曲り角のさきにあるもの」を信じる―村岡恵理『アンのゆりかご』文庫解説 ほか)
3(今読む名作・話題作;和田稔さんのこと―群れにいると見えないこと ほか)
4(「犯しがたさ」と「里山脳」―特集日本人の自然観・死生観;金子文子『何が私をこうさせたか』 ほか)
著者等紹介
梨木香歩[ナシキカホ]
1959年生まれ。『西の魔女が死んだ』で作家デビュー。小説、エッセイ、ネイチャーライティング、絵本など、さまざまな著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
94
2002年から2021年までの書評を中心とした評論文。豊かな感受性と生態系に興味を持ち、旅が好きで、何冊かの絵本や児童文学を出版されているだけに、ここで紹介されている本は読んでみたくなるものばかり。何冊かは本の巻末の解説文なので、本を読んだ後にまた会えそう。良質なブックガイドとして使えそう。「アラン島ほか」ジョン・M・シング、「洟をたらした神」吉野せい、「はじめての暗渠散歩」本田創、「シーカヤック・ハンドブック」内田正洋、「小島の春」小川正子、「きょうはマラカスのひ」「きこえる?」絵本などが気になった。2022/04/30
keroppi
88
梨木香歩さんの本にまつわるエッセイ。語られる本は、見事に私は読んでいないものがほとんど。知らない物語の数々は、小さきものたちや弱きものたちへ向ける梨木さんの暖かで確かな眼差しに浮かび上がってくる。読みたい本が色々出てくる。ここに物語があるんだなぁ。「チェルノブイリの祈り」にコロナ禍の現状を照らし合わせ、今の時代とこれからを語る視点も梨木さんらしいなと思った。2021/12/03
藤月はな(灯れ松明の火)
86
梨木香歩さんのまだまだ、自分が浅薄で無知であると痛感せざるを得ない。救頼運動という善意が齎す「個としての自由」への暴力性、自然に対しての米国のフロンティア精神と里山という概念の違い、英国では悪役と捉えられがちなアナグマへの眼差しなど、知る事も考える事もなかった事をしっかりと書いているからだ。そして「ハテルマ シキナ」という絵本の存在をこの本で初めて知り、「こころ」で蔑ろにされた「お嬢さん=静さん」への眼差しに改めて瞠目するしかないのだ。また、「椿宿の辺り」での暗渠への思想の根幹もこの本で見つけて嬉しい。2022/03/08
Ikutan
75
新聞や雑誌に掲載された書評や本に纏わるエッセイ。ひとつひとつの作品に丁寧に向き合い、奥深くまで味わい、そしてそんな読書体験を親しみやすい言葉で綴ってくれる梨木さんの真摯な姿勢が伝わってきます。印象に残ったのは、ハンセン病患者に対する不当な強制隔離政策と、それを肯定した当時の数々の書物に対する怒り。これはコロナ禍の現在でも通じることで、どんな時代でも、鵜呑みにせず、考えることの大切さを痛感させられますね。手記『わだつみのこえ消えることなく』の作者和田稔さんのことを綴った内容も、考えさせられることが多かった。2021/12/08
ベイマックス
72
梨木さんの読書感想文。読書量に敬服。そして、比べたり、引用する力量に脱帽。でも、少し難しいものもあった。そんななかで、初めて知った史実があった。(P66)「ハテルマ シキナ」。沖縄戦について。国益という名のもとに自国民を犠牲にするという本末転倒な軍。驚き、怒り、悲しい。(P122)「ハンセン病と自由について」隔離政策がひどいという話しは知っていた。でも、それは現代を生きているからなのだと感じた。正しい(と思われる)情報に接していられたから。当時は、謝った情報に人々は怯え、隔離政策に賛成していったのだろう。2025/02/13