内容説明
「夢みる権利」をみずからに許す思索家、バシュラール。このフランス哲学界の巨星が立っているのは、話題がモネのことであれシャガールのことであれ、バルザックのことであれエリュアールのことであれ、貝殻のことであれ紐の結び目のことであれ、つねに夢想と反省的思考とのつなぎ目、その交点なのである―美術、文学、夢想にわたる26章、人間と宇宙の力動性と安息について静かに力強く語りかける、詩的エッセーの遺著。
目次
第1部 美術(睡蓮あるいは夏の夜明けの驚異;シャガール『聖書』序説;光の始原 ほか)
第2部 文学(『セラフィータ』;『ゴードン・ピムの冒険』;子供ランボー ほか)
第3部 夢想(夢の空間;仮面;夢想とラジオ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
遺稿集である本書で美術、文学、夢想の瞬間を夢みる著者は、モネの睡蓮の絵にレダの白鳥の神話を重ね、睡蓮の花が夏の夜に開く瞬間をレダが卵を産む目覚めを夢みる。時計さながら規則的に進む水平的時間と個々人の感覚に左右される垂直的時間が交差する瞬間こそ、現実を歪ませ生命が感覚の外にある世界を直観させる契機となるのだ。詩の批評を読めば新たに批評が生まれ、ラジオを聴けば世界中の話し声が聞こえるような想像力の水平運動に、物質が夢を見るなら人生は夢であることを直観させる想像力が交差する瞬間は、現実の外を夢として見せるのだ。2024/11/13
ラウリスタ~
5
メルロ・ポンティの授業でバシュラールは面白いってのを聞いたので読んでみた。実際、かなり面白い。何を言っているのかはよく分からない点もあるけど、面白い。歌詞はよく分からないけど、かっこいい!って感じる洋楽のような本。つまり、文体が素敵。いかに堅苦しいことを書いているとしても作家に才能があればいくらでも面白い本に出来ることの証明。ちなみに、内容の方は、美術批評と、精神分析と、批評の批評に関する批評とか。なかなか面白い。バシュラールをもっと読もうと思う。2012/01/07
∃.狂茶党
0
没後編まれたエッセイ集。 刊行者による表題は、ますます重たい言葉になっていきます。2016/08/27