内容説明
中国帰りの資産家アーサーは、母親の家でお針子として働いている、か細い身体つきでひどく怯えた顔をした若き女性リトル・ドリットに会った。興味を持ったアーサーは、ある夜尾行し、マーシャルシー監獄へ入って行く彼女の姿を見た…。19世紀、華やかなロンドンの裏にひそむ悲惨な生活、社会の矛盾や不正のしわ寄せを背負いこまされる貧しい者、弱い者たちの姿を鋭い観察眼で描いた『リトル・ドリット』を全4冊で刊行する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
103
最初から随分と読みやすい。一巻の舞台は、主に債務者の入れられる監獄。リトルドリットの父は長くここにいるために、マーシャルシーの父と呼ばれ、一部からの尊敬を集める。しかし本当は、現実を直視できず、若い娘に全てを背負わせてながらも虐げられたとの被害者意識を持つ恥ずべき人物だ。彼女に寄生しているのは父だけでなく、兄も姉もだ。しかし、彼女は健気に耐え、父や兄姉を愛するのだ。彼女の人柄がお人好しで健気に過ぎ、それが物語に十分と入り込めない足枷となっている。2016/01/26
のっち♬
99
父を失い帰国したアーサーは母が雇ったエイミーに心惹かれ、22歳まで債務者監獄で生きてきた彼女の出獄のために奔走する。冒頭の有罪と無罪の優先度・力関係が逆転した「監獄」が包括的モチーフとして機能する。登場人物たちは悉く近代経済の精神に囚われており、脱却に無関心。シゴトヤルベカラズな役所(或いは政府)が拍車をかけている。ウィリアムは最も象徴的な囚人で、寸志をせびる父親を持つ気まずさや弁解は著者の実体験だけに切実。「俺を閉じ込めている錠と鍵は多くの面倒ごとを閉め出してくれている」—不自然な平安こそが監獄の怖さ。2018/05/31
NAO
36
リトル・ドリットが生まれたマーシャルシー債務者監獄は、破産したディケンズの父親が入れられた場所でもある。ディケンズの作品にはこの監獄がよく登場するが、『リトル・ドリット』は、まさにその監獄が舞台。監獄生活に慣れきって「マーシャルシーの父」として君臨するリトル・ドリットの父親の姿とお針子として働くリトル・ドリットの健気な姿に、ディケンスの苦い過去が映し出されている。一方中国からロンドンに戻ってきたアーサーと彼が船の中で出会った人々が、徐々に物語に絡み始めてくる。ミステリー張りの伏線の張り方に気が抜けない。2015/11/25
ごへいもち
18
表紙絵がとてもいい。くすくす笑えるところもあるけどついていくのが面倒な部分や訳注がないとわからないことも。でも先が楽しみ。ドラマになったらしい。見たいなぁ2012/05/06
秋良
12
【G1000】債務者監獄で生まれ育ったリトル・ドリットが健気通り越してイライラするのは私だけ?その彼女に庇護欲のような愛情のようなものを抱くアーサー。えっとここから歳の差恋愛が始まるんでしょうか。相変わらずディケンズの文章はあっちへ行きこっちへ向かい、よく分からない誇張が入って、文学というよりアニメちっく。この感じはトムとジェリーとかにあるやつ!2022/06/11