内容説明
人間は「イリヤ」(ある)という非人称の牢獄から逃がれることが可能か。深いユダヤ的体験からハイデガー哲学との対決を通して、人間存在と暴力について根源的な問いを発し、独創的な倫理哲学を展開して「他者」の発見にいたるレヴィナスの思想の歩み、その40年の哲学的成果、「フライブルク、フッサール、現象学」「逃走論」「ある」「時間と他なるもの」「存在論は根源的か」など、21篇を集大成。
目次
エトムント・フッサール氏の『諸構想』について
フライブルク、フッサール、現象学
ヒトラー主義哲学に関する若干の考察
書評(『哲学と現象学年誌』;ルイ・ラヴェル『全的現前』)
マイモニデスの現代性
逃走論
書評(スピノザ、中世の哲学者)
すべては空しいか
ある〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
40
この本は解説からお読みになることをおすすめしたい。レヴィナスと同時代に生きたフッサールやハイデガーとの関係もわかるし、何よりレヴィナス自身がどういった経歴の持ち主なのか知っておいたほうが本文の解読に役立つだろう。2015/11/30
塩崎ツトム
17
難しすぎて20ページ進むたびに居眠りしてしまった……。しかしながら、どんなアホでも、レヴィナスの思想の深化が、あの大戦と、あの虐殺にあることくらいはうっすらとわかるのである。2025/05/08
マウリツィウス
14
【LEVINAS/古代ユダヤ教二項機軸】新約聖書言語を定義した古代イスラエル時代を前提視したHEBREWとはGREEKの再現であることを知る反人類史は形成するデリダ系譜にある。BORGES、この鍵=ラテンアメリカの脅威はこのフランス現代思想先駆者に受け継がれ古代ユダヤと新約ギリシャは一貫経路において融合会合、シェイクスピアとは虚妄だ、存在してはならない。その否定序説が続行する創世記の永遠回帰論こそがニーチェ無神論を撤収させる。究極言語とは惨憺と表象、エクソダスとは異化作用における悪夢だ。ヤーウェ創造論説。2013/05/29
しんすけ
7
23歳から62歳までのレヴィナスの作品が収録されている。なかでも、45歳時の「存在論は根源的か」と、48歳時の「自我と全体性」は、深く感銘を与える。後者後半に観える下記はレヴィナスの根本的な主張であろう。「人間的な世界とは、歴史を裁くことが可能であるような世界である。」p419 この少し前には、下記のように書かれていた。「人間はもちろん、物になるわけではないが、死せる魂と化す。これは物象化ではない。これが歴史なのだ。歴史を裁くのは後世の人々であり、いまだ存在せざる人々である。2018/05/27
テツ
6
塾で話をしていてレヴィナスを読み返してみたくなり秋の夜長に読み込む。以前一度真面目に読み込んだときと同様にレヴィナスは本当に理解し難い。彼のアイデンティティへの理解やユダヤ教への知識等が足りない自分が読んでも理解できないのは当然なんだけれど。ただ戦後に彼が到達した新たな存在の在り方や、他者への責任という部分だけはそこそこ理解出来たと思う。『逃走論』は文章が美しすぎて文学作品に見える。とても哲学論文とは思えない笑2015/11/17
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- 和書
- 血腐れ 新潮文庫