内容説明
江戸時代を生きた人びとは、病気をどのように見つめ、それとどのようにつき合ってきたのだろうか。彼らはいかなるむごさとやさしさのなかにあったのだろうか。この時代、もっとも恵まれていた将軍の子女でさえ、大半が乳幼児期に死亡し、ひとたび疫病が猛威をふるえば大量の死者を算し埋葬さえおぼつかなくなったが、その痛苦と畏怖の彼方にはいのちの痛みをわかち合う「文化」があった。過去の痛みを追体験し、現代において病むことの意味を問い直す力作。
目次
お松の場合
馬琴の場合
庶民の証言
外国人の証言
飢餓と疫病
異常気象とインフルエンザ
痘瘡
梅毒
結核
コレラ
食生活と病気
寄生虫病と風土病
女と子どもの病気
精神病
鉱山病
医療環境
平均寿命―どれだけ生きられたか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
10
余りの啓蒙的内容に、感銘と衝撃を覚え、行きつ戻りつして読み耽ってしまった。 昔から、読書=楽しみというより「独学的」興味と関心の掘り下げだったので、この本を読み、律する意味での読む傾向が深まりそう。 筆者も「江戸期の病を論じつつ、現代の我々が抱える大きな悩みの根源を極める」と述べている。 構成が巧みで、①自、他国からの視点②気象的観点③バンデミックと感染症④食生活、庶民、風土病⑤医療環境と寿命 ④が特に興味深く、明治初期までの幼児死亡がいかに酷かったか・・だからこそ社会あげて命を守ったと記している。 2013/09/14
夜
6
江戸時代の病気と治療法について。天然痘の治療法について調べるために読み始めたが、コレラや結核、インフルエンザ、寄生虫病など多岐にわたって記載があり、日本の公衆衛生についても興味を持たせる本。もしマンガやドラマみたいに幕末ごろにタイムスリップしたら、竜馬暗殺犯を知るどころかコレラか天然痘であっという間に死にそうな気がした^_^;2015/02/17
たまうさ
1
江戸時代に生まれなくて良かったと、つくづく思わされる本。2014/03/22
猫之助
1
病は時代を映すというけれど、まさにそれ。 西洋医学がまだ広まっていない時代に人々は病に対して何を抱いていたのか。 様々なものがあるけれども、特に畏れ、敬い、疫神として祀りあげて、病人の周囲で騒ぐ、病気を神様にして付き合っていく、ということにとても興味を持ちました。