ちくま学芸文庫<br> 精神疾患とパーソナリティ

ちくま学芸文庫
精神疾患とパーソナリティ

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  • サイズ 文庫判/ページ数 262p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784480083944
  • NDC分類 135.5
  • Cコード C0110

内容説明

精神の医学と身体の医学とは、いかなる関係をとり結ぶべきなのか?精神医学の分野で思想的第一歩を踏み出したフーコーは、この基本的問いを発することから始めている。精神の病理学を疑似科学的な身体の病理学から解放し、患者の“主観性”に彩られた病的宇宙の意味づけを行わねばならない。そして、現存在分析を媒介としつつ、世界における人間の実存そのものを問題にしようとする。しかし、人間を疎外する社会のなかに「精神疾患の患者」を作り出す歴史的条件が備わっているならば、そもそも異常性とは社会と文化に依存することになるのではないか。のちの『狂気の歴史』(1961年)の思索への大転回を内包した幻の処女作(1954年)。

目次

精神の医学と身体の医学
第1部 病の心理学的な次元(病と発達;病と個人史;病と実存)
第2部 病の条件(精神の病の歴史的な意味;葛藤の心理学)

著者等紹介

フーコー,ミシェル[フーコー,ミシェル][Foucault,Michel]
1926‐84年。フランスの哲学者。エコール・ノルマル・シュペリウールで哲学を学び、その後、精神医学の研究などに従事、『狂気の歴史』『臨床医学の誕生』を世に問う。続いて刊行した『言葉と物』『知の考古学』は1960年代における「構造主義」的思索の潮流のなかで、一種のブームを巻き起こした

中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。思想家・翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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evifrei

21
実は食わず嫌いで殆ど読まずにきたフーコー。食わず嫌いかどうかの検証のために何冊か読むことにしたが、本書の仮定と限界を検討しながら進行する筆捌きは悔しいことに面白い。精神疾患を理解する補助線として狂気の歴史を援用し、狂気の歴史が地位を付与するものから近代に至って監視と懲罰の対象へと変化されてきた事実を示す。監視・懲罰の対象へと狂気が変化した事により、我々が狂気の世界と対面する事が出来なくなったという見解は、普遍的な見解として今でも充分納得が出来る。そして現代に至るまで狂気の監視が進行を続けている様にも思う。2020/06/21

ラウリスタ~

19
フーコーがフーコーになる以前、精神病院で研修医として勤務していたころに書かれた初めての著作。「哲学者」フーコーは、もともと精神科医としてのキャリアをスタートさせていた。しかし、ロボトミー手術を受けた患者の顔に責めさいなまれ、医者になることを断念した。また彼が精神病院で関心を持ったのは、患者の精神状態ではなく、患者と医者との間に構築される関係だった。そんな、まだ医者の卵であったころのフーコーの「まじめ」な論文。「狂気の歴史」などへと繋がる重要な要素はすでに多く現れている。2015/04/16

roughfractus02

9
自身の存在の苦悩から2度自殺を試みた著者は精神医学に向かい、研修を重ねる中で医者と患者の関係性に興味を持ち、同時に身体と精神が医学において平行的に扱われる点に注目したという。著者は20世紀前半のH・セリエのストレス説やK・ゴールドシュタインの脳病理学に身体と精神を一般病理学に統合する全体論的想定を見て、その曖昧さを批判する。全体論が用いる身体を基準とした部分への分割可能性、正常と病理の区分可能性、医者と患者の関係の分離可能性の3点を比較する本書は、その不可能性から精神を実体概念から関係概念へシフトさせる。2024/11/19

にしの

8
これ現代日本の精神科医のどれくらいが読んでるんだろう?すごいよフーコー、ずっとわからなかったことばっかり書いてある2019/05/26

さえきかずひこ

7
54年刊行の本書論旨はビンスワンガーの現存在分析の批判的受容に拠る。著者は1940年代のフランス精神病理学が、身体疾患と精神疾患の質的差異を看過していることを鋭く指摘し、精神病者の主観を分析せねばならんとする。まずフロイトが批判的に考察されその患者の生活史への関心は肯定的に評価される。次に病者の不安に満ちた内面を捉える為にビンスワンガーの方法を参照し実存論的分析に活路を見出すが、最終的には病を病と見なし人を疎外する状況は社会・文化に依存するという点にまで思索を推し進めるのが実に哲学的で読み応え充分である。2020/07/07

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