内容説明
もともと儒学では夫婦の和合は賛美されるが、未婚の男女交際は認められない。結婚も親の取決めによる。この風習は中原の漢民族文芸に影を落とし、長い間、中国には純粋な恋愛小説はなかった。が、度重なる異民族の支配により、「恋」を知った漢民族は、他民族の血と文化を自らに取り入れ、変容させ、新たな活力にしてきた。そしてやがて清代には恋愛小説の大作『紅楼夢』が登場し、人びとを魅了する…。中国史を漢民族の文化の変容の歴史としてとらえ、「恋」という側面からそれを浮き彫りにした意欲作。
目次
序章 文化を解く鍵―恋
第1章 閨房内の恋―中原文明の象徴
第2章 人神の恋―南方の歌垣から
第3章 人怪の恋―北方民族の文化から
第4章 美貌の胡姫たち―長安の宴
第5章 略奪婚の衝撃―漢族文化への回帰
第6章 モンゴル文化の陰影―男女共演の舞台
第7章 明代の淫らな性―『金瓶梅』の秘密
第8章 新しい恋―『紅楼夢』の謎
終章 恋愛の発見―中国文化の近代