内容説明
50年に及んで一教師として教育実践の場に立ち、退職後も新しいテーマを研究・発表しつづけている著者が、本当に“教える”ということはどういうことなのか、具体的な数々のエピソードを通して語った表題作「教えるということ」をはじめ、「教師の仕事」、「教室に魅力を」、「若いときにしておいてよかったと思うこと」を収録。プロの教師としてあるべき姿、教育に取り組む姿勢について、きびしくかつ暖かく語る。教育にかかわる人をはじめ、教育に関心をもつすべての人々、とくにこれからの社会を担う若い人々に贈る一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
55
およそ、人(特に子ども)を育てる職業を目指す若者にお勧めしたい。「先生はえらい」なんて露程も思わない私ですが、大村はま先生は、これまで見聞きした先生の中で数少ない偉いと思える先生の一人に加わった。書きたい事は多くあるのですが、あえて、一つだけここに書き留めます。出来ない生徒を成長させるのは当然ですが、そこに授業のレベルを合わせるのではなく、同じ教室で学ぶ優秀な子どもを含めた一人一人の生徒がそれぞれに成長できる授業を教科書だけに依存せず、先生自身が自分を高めながら教材自体を生み出す姿勢はプロ先生中のプロだ。2024/02/04
ちゅんさん
48
いまは子ども達に教えることを仕事としているのでとても身が引き締まりました。面白いだけではいけない、優しい子ども好きは当たり前など。そうだよなぁ2022/02/20
とびほびこび
42
偉いしゃっちょさんも、キーキー喚くモンペアさんも恩師と呼ばれる人に教え育てられたから今があるのでしょ、と自分も含め反省したくなった。昨今の教育現場がいかに検査場と化しているか、一番進んだ人を育てる為にあるはずの学校が一番遅れてしまったという指摘。個人の心意気は組織によって封じられる葛藤を感じた。人は自分の教わったやり方を知らない間に踏襲するものだそうなのでご用心。一級の教師とは仏様の指のようにそっと寄り添い、後押しした事を知られることなく自分の力で達成したという自信と勇気を与えることだ、にハッとなった。2015/02/10
niisun
33
「やってごらん」、「勉強が足りませんね」、「静かにしなさい」。大村はま氏曰く、どれも教師が使うべきではない言葉の数々。また、教師にとって『「優しくて親切」などというのは、「一生懸命」と同じことで、あたりまえのことです。教師は専門家ですから、生徒に力をつけなければだめです。』と、職業人、専門家としての務を果たさなければいけないことを強調されているのが印象的でした。複数の講演録をまとめたもののため多少冗長な部分はありますが、逆に次代を担う教師たちに、これだけは伝えておきたいという部分が鮮明に語られていますね。2017/12/13
🍒
30
教員は常に研究し続けるべきだということ。子どもたちが将来、厳しい社会を生きていけるように鍛えることが教育の責務だということ。いま学習指導要領の変革が話題になっているが、その内容は大村メソッドそのもの。だからこそ、1970年の講演記録が今も読まれ続けているのだ。子どもたちに本当に必要な「国語力」を、しっかり育てられる教員になりたいなあ。「国語なんて日本語なんだから誰にでもできる」って言う人がたまにいるけど、そうなのかな。音読、作文、要約…どうしたら1人1人の力を伸ばす働きかけができるのだろう?難しいなあ…。2018/08/25