内容説明
ヨーロッパ古代世界に最大の版図をもち、多年隆盛を誇ったローマ帝国はなぜ滅びたのか?この「消えることのない、永遠の問い」に対する不朽の解答―18世紀イギリスの歴史家E・ギボンの名筆になる大歴史書の完訳。イスラム人に占領された聖地イェルサレムを奪回すべく企てられた数度にわたる十字軍の活動が、コンスタンティノープルを略奪し、ローマ帝国の消長に力をかすことになる一大叙述。
目次
第56章(イタリアにおけるサラセン人、フランク人、ギリシア人;ノルマン人の最初の侵攻と定住; ほか)
第57章(セルジュク朝のトルコ族;ヒンドスタン征服者マフムードへの彼らの反乱 ほか)
第58章(第一回十字軍の起源と人数;ラテン諸候の性格;彼らのコンスタンティノポリスへの進軍 ほか)
第59章(ギリシア帝国の存続;第二回、第三回十字軍の人数と経路および結末;聖ベルナール ほか)
第60章(ギリシア教会とラテン教会の分裂;コンスタンティノポリスの状況;ブルガリア人の反乱 ほか)
第61章(フランス人とヴェネチア人による帝国の分割;フランドルとクルトネ両王家の五人のラテン皇帝 ほか)
第62章(ニカエアおよびコンスタンティノポリスの歴代ギリシア皇帝;ミカエル・パラエオログスの登位と治世 ほか)
第63章(ギリシア帝国内の内戦と破局;老幼アンドロニクス両帝とヨハンネス・パラエオログスの治世 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アミアンの和約
22
東はイスラム、西は十字軍おまけに内乱とまさに内憂外患のビザンツ帝国もといギリシア帝国。ついにコンスタンティノープルが十字軍に占領され、一時亡命政権を立てるまでに零落してしまう(ニカイア帝国)。これは我が国で言えば織田信長により京都から放逐された足利義昭が、備後の国・鞆の浦に建てた鞆幕府と全く同じで、奪回できなければそのまま滅亡していただろう。なんとか首都を奪回するも、もはや昔日の勢いはなく、後は座して介錯を待つのみとなる。2023/04/29
刳森伸一
5
主題は十字軍。欧州キリスト教諸国が東ローマ帝国を救い聖地パレスチナをイスラム教徒から奪還するという名目で行った遠征だが、キリスト教側とイスラム教側のどちらの視座に立つのかで解釈が大きく異なる。ギボンは当然キリスト教側から記述するのだが、キリスト教を贔屓するのではなく、あくまで客観的であろうとする。コンスタンティノプルを征服してしまう第4回十字軍とその影響に多くの頁が割かれているが、肝心の東ローマ帝国に関する記述が少なく、そしてほぼ良いところがない。瀕死の状態にも関わらず内訌が続き、これでは再興は望めない。2017/02/08
Βουλγαροκτόνος
1
【両シチリア王国・セルジューク朝・十字軍〜ヨハネス6世カンタクゼノス】非常に興味深い巻だが、やはりメインは十字軍▼第4回十字軍を、イサキオスⅡアレクシオスⅣ親子vs.アレクシオスⅢの「壬申の乱型」帝位争いと見ると、意外に世界史上では陳腐なものだ。ラテン帝国が長続きしなかったのも、(ニケーアに有能なヨハネスⅢミカエルⅧがいたこともあるが)彼らの長期的な支配ビジョンの欠如から説明できる▼一方、帝都を奪回しても帝位争いは続き、互いに異民族の力を借りて紛争の火種を作るという悪循環は一向に収まらない。滅亡は迫る。2023/06/13
斉藤達也
1
キリスト教徒の視点から書かれているのに、十字軍は単なる野蛮人として、一方セルジューク・トルコのスルタン達やサラディンは名君として描かれている点が興味深い。2022/03/05
かわかみ
1
サラセン人、フランク人、ギリシャ人を中心とした諸民族の争いの中でセルジュク・トルコが興隆した。シャルルマーニュ戴冠によって東西教会の分裂は決定的になったのだが、コンスタンティノープル奪還のために十字軍の遠征が試みられた。第4回十字軍で地中海に興隆したヴェネチアとフランスの同盟によってコンスタンティノープルが占領され、ビザンチン帝国は分割されラテン帝国と化したが、後にギリシャ人はコンスタンティノープルを奪還する。しかし、ラテン帝国は内戦と破局に陥り、ヴェネチアとジェノアの栄華に帝国がかすんでしまった。2021/09/04