内容説明
ヨーロッパ古代世界に最大の版図をもち、多年隆盛を誇ったローマ帝国はなぜ滅びたのか。この「消えることのない、永遠の問い」に対する不朽の解答―18世紀イギリスの歴史家E・ギボンの名筆になる大歴史書の完訳。西ローマ帝国滅亡後、舞台はコンスタンティノポリスを首都とする東ローマ帝国に移る。この帝国の中興の祖とうたわれるユスティニアヌス帝と皇妃テオドラ、勇将ベリサリウスの時代を跡づけ、現代法律学にも影響を及ぼすローマ法とユスティニアヌス法典を語る。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
19
6巻は「ニカの乱」で破壊されたコンスタンティノープルの聖ソフィア大聖堂を再建、<スキピオの再来>名将べリサリウスや宦官ナルセスらの活躍によって東ローマ帝国の領土を増やし、歴代皇帝の法令や過去の重要な法学者の学説や解釈を整理するなどした『ローマ法大全』を編纂させた「大帝」ユスティニアヌスの治世が主として扱われる。所謂シルクロードについても少し言及されるほか、トルコやペルシャ、「蛮族」の世界の状況にも紙幅が割かれ、最後の章では古代からユスティニアヌスまでのローマ法史が展開されるが難解で、斜め読みしてしまった。2023/09/18
アミアンの和約
19
ユスティニアヌス帝の生涯を中心に綴られる。今までの巻と比べると若干ボリュームが減っている。ローマ法はややこしくてよくわからなかった。勇将ベリサリウスは、著者のギボンのお気に入りの人物なのか、多くの紙幅が割かれており、どこか筆が乘っているように感じた。2023/04/19
刳森伸一
6
6巻は、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)において最大の領土を征服したユスティニアヌス帝の時代が中心。ユスティニアヌス帝自身は英雄とはいえないが、配下のベリサリウスやナルセスの活躍がめざましい。しかし、無理な領土拡充と戦乱のせいで折角奪取したイタリア本土などの領土は荒れ果てており、今後の凋落を印象づける。また、ローマ法に関する章もあり、ギボンの造詣の深さに改めて感嘆する。2017/01/26
Βουλγαροκτόνος
1
【レオ1世/ゼノン帝〜ユスティニアヌス帝】ユスティニアヌス帝も所詮専制君主であり、悪徳は多い(教科書に「大帝」と書くのはやめたほうが良い)。将軍ベリサリウスへの冷遇もその1つ。彼の治世は皇后テオドラ、宦官ナルセス、トリボニアヌスを含めた一部の優秀な人材によって辛うじて支えられていたという印象。意外にも、ニカの乱など首都での出来事の記述は少なく、イタリア・アフリカが中心。プロコビオスの歴史が読みたくなった。ローマ法の解説も興味深い。2022/07/14
かわかみ
1
ユスティニアヌス帝治下のビザンチン帝国(イタリア半島を含む)ではコンスタンティノープル市民が派閥に分かれ暴動を繰り返した。反面、帝国の農業は発展し、分業と商品経済により国富は増した。優れた将軍ベリサリウスの働きによって旧西帝国の属州の半分も回復された。後にゴートの王、トティラによりローマが占領された時も老将、ベリサリウスが召喚され、ローマを回復したがユスティニアス帝は嫉妬に駆られ彼を冷遇したのだった。第44章はローマ法を説明しているが財産権(占有、時効)の概念は重要と思われる。2021/08/18