内容説明
「ゴダールに熱い興奮を禁じえない一つの魂が同時にマキノ雅弘にも涙してしまうという現実、それは何も理性と情念の不本意な隔離を嘆くべき問題ではなく、まさに映像の記号学的論理の、意味されるものを越えた普遍性を証拠だてるものでしかない。」無限大の闇の向こう、銀幕の上ではおぼろげに輝いている「映画」を、論理と批評の場に引きずり出してみよう。鮮やかな手つきで「映画」を諸要素に分け、その「記号」や「しぐさ」を、「現代の物語」として解読してみる。反‐美学的で反‐教育的、ときにはエロチックに映画と戯れる偏愛的映画論。
目次
映画・この不在なるものの輝き(批評と崩壊意識;視線劇の基本構造;沈黙する透明なフィルム)
映像の理論から理論の映像へ(理論の場としてのフィルム断片;フィルム体験、そして不可能性の映像;触れることと離れてあるもの;決闘の欺瞞;世界の停滞から壁の映像へ)
自動車の神話学(現代の物語を読む?;自動車映画の史的貧困;停止装置の説話体系;不可視の結節点としての記号;非の譚としての現代=映画論)
映画、荒唐無稽の反記号(フィルム体験とその環境;ヒチコック、または曲線の勝利;現在に酷似する映画的言説の頽廃―山口昌男批判;愚鈍なるものの残酷―いま一つの『カッコー』論)
映画と落ちること(縦の世界=垂直の運動;映画的装置のシニシズム;縦の誘惑;ヒチコック的世界;落ちずにいること)
著者等紹介
蓮實重彦[ハスミシゲヒコ]
1936年、東京生まれ。1960年東京大学仏文学科卒業。1962‐5年、フランス留学。東京大学教養学部表象文化論教授。専攻はフローベールであるが、映画・現代思想・文芸評論など幅広い場で、妙味あふれる卓抜した論考を展開している。1985年より季刊映画誌『リュミエール』を編集(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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