内容説明
鮮烈な衝撃を残して20世紀を駆け抜けた天才ピアニストの生と死と音楽。コンサートを拒否し、スタジオにこもって生み出された、世界の果てに位置し、作品の内部から発せられる光に包まれているかのごときその演奏―フランスの精神分析学者が、透明なタッチで奏でるグールドへのレクイエム。ピアノという孤独な楽器の運命を描く狂熱のドラマでもある、最もドラマティックなグールド論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kajitt22
15
バッハのゴールドベルク変奏曲に魅了されこの本を購入したが、奥付を確認すると約20年積読本になっていたようだ。そのゴ-ルドベルクと同じ二つのアリアに挟まれた30の変奏曲という構成で語られる孤独・隠遁・消滅・美・離脱・北・・・を通奏低音にしたグレン・グールドの後半生。少し難解な文章ながら、少しづつ味わいながら今回は読了できた。そして未聴の、グールドの弾くシュトラウスとベートーベンを聞きながら、グールドが最後まで気にかけていたという夏目漱石の『草枕』を読むという楽しみを与えてくれたこの本に感謝。2016/12/13
マリリン
14
弾きながら歌う・譜面通りに弾かない・大きな舞台での演奏への考え方…。自分の演奏に対する姿勢は...と、いつも疑問を持ちつつ少しずつ変化していったと思うが、この言葉は嬉しかった。どちらもピアノの師には否定されたものの、個人的には大切にしていた事だから。音楽家にとって一番大切なものは、内部の耳です…という言葉が印象的だった。2015/06/27
Kano Ts
8
グールド本はつい読んでしまう。書いてあることはそんなに変わらないんですが、グールドが奏でる音楽に関する説を読むのが楽しいんです。2024/08/05
misui
8
全然わからない奇態な一冊だけどわからないなりにアウトラインくらいはつかめたかな。それより、読みながら流していたグールドの演奏があまりに素晴らしくて、あらためて良さを気づかされたのが大収穫だった。聴き込んでテキストなども集めてみたい。2023/07/30
sohara
5
俳句友達からの貸与本。漱石が自ら俳句的小説と呼ぶ『草枕』が、グールドの死後、ベッド脇にあったという本書での言及による。俳句への言及は当然ながら皆無、しかも、西洋古典音楽関係の用語が頻出するので、その方面に疎い筆者には極めて分かりにくい。とはいえ、著者が一人称で語るグールドの心象風景や幼児期からのエピソードは非常に魅力的なので、理解できない部分は目を通すだけで良しとし、読了。シューマンの「遠くからやってくるように」という指示表現にいたく感銘。『ブラームス:間奏曲集』はそんな音でした。絵画で言えば水墨画。2013/11/26
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