内容説明
大きな期待をもって世に送りだした『ツァラトゥストラ』の不評に心を痛めるニーチェ。『善悪の彼岸』は誤解と歪曲から自己の思想を救う意図をこめて、その一種の注釈書として著わされた。本書では、19世紀ヨーロッパの道徳と宗教の価値が厳しく問われ、いわゆる〈客観性〉〈歴史的感覚〉〈科学性〉〈同情〉という近代的信仰の対象物が鋭い批判のメスで解剖されている。ニーチェの哲学の円熟期を代表する重要な著作の一つである『善悪の彼岸』、その終楽章ともいうべき『道徳の系譜』の二作品を収録する。
目次
善悪の彼岸(哲学者の先入見について;自由なる精神;宗教的なるもの;箴言と間奏曲;道徳の博物学について;われわれ学者たち;われわれの徳;民族と祖国;高貴とは何か;高峰より)
道徳の系譜(「善と悪」、「よい〈優良〉とわるい〈劣悪〉」;〈負い目〉、〈良心の疚しさ〉、およびその類いのことども;禁欲主義的理想は何を意味するか?)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
17
この本はニーチェがルサンチマンについて語る。ルサンチマンとは怨念感情のこと。善悪も道徳も全て否定するような本で、ビックリする。これは哲学とも思想とも呼ばれようなものなのかな?寄せられる感想も肯定的なものはほとんどない。行動経済学の感情ヒューリティクスだとの感想もある。平たく言うと、イヤナ奴と言うことか?キリスト教の愛の感情さえ、ただの弱者への同情心だと言う。スピノザもデカルトも否定。自然崇拝さえ否定している。スピノザの万物の背後に神がある言う汎神も完全に否定する。全てはただの物質だと言うのか?2023/03/31
テツ
17
先日久々に会った友人と道徳の系譜について話したので。ニーチェのバックボーンや当時の時代背景から生まれたキリスト教への強烈な批判精神を識っておかなければ表面をなぞるだけで終わってしまうんだろう。道徳、キリスト教を広める力となったいわゆる奴隷道徳はルサンチマンから誕生する。道徳も真理も弱者が生きるために創りあげたものとして徹底的に批判し攻撃を加える嵐のようなニーチェの意思に飲まれてしまう程若くはないけれど、思春期に背伸びして読んだならこの嵐に巻き込まれてしまったのかもな。毒と薬は表裏一体。2017/04/25
roughfractus02
4
「真理とは何か」なる問いを「女とは何か」と同等に扱うと、真理は単なる願望となる。著者は道徳を他者に自己の願望を押し付ける欺瞞とし、その根底にある真理探求の構え(認識)を一つの解釈として示す(『善悪の彼岸』)。さらに、この解釈が人々の心に奴隷状態を作るトップダウンの歴史に対し、権力への意志から成るボトムアップの系譜が提示される。系譜では、自己肯定である「よい」が諸権力の抗争で生き残った道徳的「よい」に変わり、「悪い」は蔑視から憎悪に変質して欠如した者たちのルサンチマンとなる過程が示される(『道徳の系譜』)。2017/08/11
pyonko
4
キリスト教の様な大きな宗教に影響を受けていない身としては、やっぱりピンとこないところもある。著者が伝えたかったことの半分も理解できなかったと思うが、当時のヨーロッパ諸国をどう見ていたかなど、そういった部分は読んでいて単純に興味深い。2015/05/15
ひろし
2
長かった〜。難しかった〜。とにかく過激なことが書いてあるのは感じた。2021/03/16