内容説明
1881年夏、スイスのシルス・マリア近郊の聳え立つ巨大な岩塊のそばで、永遠回帰の思想の霊感が雷鳴のようにニーチェを襲った。構想から一年半後の二月、この奇跡的な作品の第一部が誕生する。古代ペルシアの予言者ツァラトゥストラが語る教説の形式をとって、超人の理想が序説において示され、第一部で神の死の宣告、さらに第二部で権力への意志が説かれる。ニーチェの哲学の根本思想が苦悩と歓喜のもとに展開される詩的香気に溢れた最高傑作。上巻には全四部構成のうち、序説および第一部から第二部までを収録。なお、文庫収録にあたっては、最近のニーチェ研究の成果に基づいて訳註を大幅に増補改訂した。
目次
ツァラトゥストラの序説
ツァラトゥストラの説話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
44
小説と哲学の合体形式のようでいて大部分は従来のアフォリズムによる露悪的な煽りなので、話しの筋があることを期待して読むと言葉が滑っていく。何かフックがないかと探してみると、動物や生き物の寓話が出てくることに気付く。有名なラクダ→獅子→子供は第1部の冒頭、第19章には毒ヘビ蛇に噛まれるが、噛んだ毒ヘビがその傷をなめたという不穏な寓話がある。また第2部の第7章には「タラントゥラどもについて」という章がある。ここでの毒とは平等主義のことだ。ツァラトストラは人間が「超人」へと高みに昇っていく時に、弱者が強者を裁くル2025/04/19
∃.狂茶党
19
結局ちくま学芸文庫版全集で読み始める。 あまり訳註がないらしい、講談社学術文庫のほうが読みやすいだろうと思われます。 訳註がかなり充実しているのですが、本文からいちいち注を読んでいると、本文が進まないので、二冊の本を並行して読むような感じで、大きな段落ごとに読む。 これまでのニーチェの書物からかなり逸脱している。 これは幻想文学の類ではないのか。 一旦訳註は無視して本文だけ読み切るべきか。 2023/10/22
ミサ
5
哲学書の堅苦しさがなく物語形式で読みやすい。ちゃんと理解しようと思ったら何度も読み返さないといけないけど。「あらゆる大いなる愛は、同情としての愛のすべてより、さらに上にある」っていう一文が印象的だった。ちくま学芸文庫は訳註が丁寧で一番いいと思う。2018/10/22
roughfractus02
5
出来事に導く書物が物語を装うのは、物語世界やその意味を同定する習慣から読者を解放するためだろう。山頂の高みから降りてくる男は、経験を重ねて高みを目指す物語的主人公ではない。自由、意志、可能性に満ちた生を持つ人間概念を否定する彼は、習慣を構成するあらゆる要素を批判し、無視や嘲弄、食い違う対話等に出会いながら権力への意志と永遠回帰の教説を伝えずに山に戻る(この巻は第2部まで)。本書はその道行きを寓話的手法で綴りつつ、手法自ら指示不能な沈黙まで徹底していく。習慣を批判される読者は困惑とともに出来事を受け入れる。2017/08/09
えこいのさん
3
色々わかったうえで読まないと、「なんかカッコイイ!」っていう印象しか残らない気がする2010/01/04